ブラザーサンタ


ユナイテッド・シネマ豊洲にて観賞。とても面白かった。



クロース一家に生まれた男の子、フレッドとニコラス。聡明で運のよい弟・ニコラスは、長じて聖人サンタクロース(ポール・ジアマッティ)となった。一方兄のフレッド(ヴィンス・ボーン)はシカゴでその日暮らし。
ある日、留置場に入れられたフレッドは苦肉の策で弟に保釈金を依頼する。出された条件は、クリスマスまでの数日間「サンタ」の仕事を手伝うこと。北極で久々の再会を果たした二人だが、おもちゃ工場は閉鎖の危機にさらされていた。


ららぽーと豊洲に向かう有楽町線で、これまで見かけたことがないレベルで爆睡している女性がいた。自身の携帯電話が鳴ってもぴくりともしない。すると、向かいに座っていた初老の夫婦の女性の方が、降りる際に彼女の肩をゆすった。結局起きなかったけど。
ブラザーサンタ」のニコラスとフレッドの母親(キャシー・ベイツ)も、その場に居合わせたら、やはり彼女をゆすぶって起こすだろう。こういう「おばさん」の良識は、世の中に必要だと私は思うけど、この種の人の持つ、全人類が「自分と同じ世界」に未来永劫生きているとでもいうような信念は、身内にとっては結構迷惑である。
この映画では、サンタのニコラスを始め、弟のフレッド、エルフのウィリー(ジョン・マイケル・ヒギンズ)、検査官のクライド(ケビン・スペイシー)などほぼ皆が他人との関わりによって変化するが、母親だけは全く変わらない。聖人となった息子に対し、妻は巨大な腹を見かねて夕食を加減しているのに、「ぜんぜん太ってないわ」などと食べさせる(しかしこういうタイプに限って、テレビ番組やベストセラー本などをきっかけに突然「あなたは太りすぎよ」などと言い出すものだ)。ラストの一件落着のシーンで、以前として続く小言に、フレッドの手がぶるぶるしていたのが可笑しかった。


この映画には、ベタだけどスジの通った気持ちよさがある。
たとえば検査官(彼はどういう組織から派遣されてきたんだろう?)は、幼い頃の自分を助けてくれなかった「サンタクロース」に解雇状を突き付けることが自身を救う道と信じてきたが、実際にはサンタの言動により救われる。でも、彼をいじめた子どもたちはどうなるのか?また、その子たちは、なぜ彼をいじめたのか?「わるいこと」の原因をたどればキリがない。しかしフレッドいわく、他人のせいにするな。自分で自分の道を切り開くんだ。勿論物事はそんなにシンプルではないけれど、物語の中ではそうして解決する。
また、サンタ映画につきものの「いい子」「わるい子」判別についても、少々泣けるシーンでもって、きちんとスジを通してくれる。


「兄弟の葛藤を乗り越える会」には笑った。アメリカ映画にはああいうセラピーの場面がよく出てくるけど、兄弟姉妹の問題を扱うものは初めて見た。男女別なのか、女性の参加者が皆無なのが不思議だった。


サンタの奥さん(ミランダ・リチャードソン)と秘書(エリザベス・バンクス)の格好はいまいちだと思ったけど、とくに奥さんの服装はキャラクターに合っていた。雪の中を歩くのに、あの上着とスカートならブーツがいいと思うんだけど、あくまでもヒールの細いパンプスを履いている。秘書のほうは、同行者に私ぽいスカートだと言われた。
女性用の「サンタ」のコスプレって、なんで女なのにサンタなの?(最近は本場にも女性のサンタがいるらしいけど)と思ってたけど、「秘書」というのは使えるなと思った。
一方、ヴィンス・ボーンがサンタの衣装に着替えるシーンでは、男の「サンタ」のコスプレはいいものだと思った(肉体労働者だし←そういう好みなので)。彼がその格好で、ワンダ(レイチェル・ワイズ)の寝室を朝方訪ねるシーンはちょっとどきどきした。


誰かを「嫌い」と思うことと、「いなければいのに」と思うこととは違う。後者はまるで恋のようだ。「ブロークバック・マウンテン」の二人を思い出した。