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2004年ロシア映画。ジャケ写や裏の解説(アルバトロス当該ページ)に「潜水艦映画だ〜」とワクワク見始めたのですが、いい意味で、期待は裏切られました。面白かった〜。


港町のちいさな波止場。水兵の塗りたくった赤ペンキの被害に遭う海鳥。はためく国旗を見上げる艦長。あちこちから集まってくる乗組員たち。そのほとんどは「潜水艦映画」らしくないスッキリした顔。さらに頭部もスッキリ気味の若い航海長は、ラップミュージックはいいなァ〜などと遅刻寸前までねばっている。



軍事訓練に出るこの通称「スラヴ・ガール」には、一年生水兵の他に、初めて潜水艦に乗るというので心おどらせているオヤジがいた。学者で名前はチェルネンコ楳図かずおを数十才若くしたような風貌、青ジャージに肩かけカバン。艦内の風習を知らない彼を皆はバカにするが、その風習というのが、どの世界でもそうだけど、外部からすると知らなくて当然のことばかり。声を掛けるときは「ちょっといいですか」ではなく「すいません」…というのはまだしも、持ち込んだ金魚の水槽に氷が入ってるのは「ゆだっちゃうからな!」って、それ、ホントなの?
でもって、まるい出入り口をひょいっとくぐり抜ける、潜水艦映画には頻繁に出てくるアレを初めてやった学者さんは、マジメな顔でガッツポーズ。役には立たなさそうだけど、憎めないオヤジだ。でもやっぱり、乗組員たちには受け入れられない(笑)


このあたりまで、いわゆる「潜水艦映画」の趣はまったくありません。でもその「普通の人たちぶり」が面白い。
しかしこの後「スラヴ・ガール」は、放った魚雷の燃料タンクが海中で機雷に衝突したことにより、予想もし得なかった危機に見舞われる。おし流され、火だるまになる乗組員たち。
 (↓以下ネタバレ)
結局、かろうじて使える一組の潜水セット(12組あるのに使えるのは一組だけ…でもそれが明らかになるくだりは、それこそ普通の会社でもありそうな、「潜水艦映画」らしからぬ一幕)を着込んだ上記の学者さんが72メートルの深度から脱出し、救出を求めることに。私なら何度聞いても覚えられそうにない「脱出の手順」を聞きつつぎょろぎょろする、マスクごしの眼がコワイ。
結末は…私、こういうリドル・ストーリー、好きなんだよなあ。灯りだす町の明かりが印象的。


ところで後半、まんじりともしない中、乗組員同士がこんな会話を交わすシーンがある。
「オレンジ食べるか?」
「…だってお前、どうせ「オレンジなんてない」って言うんだろ?」
(…と最初の彼、食糧庫からくすねておいたオレンジを取り出す)
こんな返し方をされるってことは、いつもこんなようなことを仲間相手に言ってたからだよね。これと似たようなこと、私もよく言うんだ。冷蔵庫のアレ、食べちゃったよ!え〜ほんと?ううん、ウソ!みたいな。ばからしいけど、気付くと口から出てるの…(笑)