クローゼット


今年最後を飾る韓国映画として充分満足。そんなに甘くないぞと若干の不満を抱きつつも、ハ・ジョンウ演じる悪い大人がヒーローになるまでの物語を胸熱くして見た。オープニング、運転席の父親がサングラスを外すと娘の方が目を閉じ視線が合うことはないという描写に親子間の断絶が表れていたのが、ラストにお茶目に回収されるのが上手い。

ホラー映画を面白いとも、そもそも怖いともあまり思わない私が好きな数少ない作品の一つが「インシディアス」シリーズ。その理由は同じ場所に二つの世界が存在するという設定(がはっきり説明されること)に「ロマン」を感じて胸躍るから。本作もそう。ハ・ジョンウ演じる父親がカフェインを摂って死者の世界に潜入する場面にわくわくさせられる。

作中最初の恐怖シーンの後に父親のパニック障害による妄想だと示されるため、それなら怖くないなと思っていたら、次の恐怖シーンに驚き震え上がってしまった。しかし程無くそれは怖がるべきものではないと分かる。これが話の根幹に繋がっている。死者の世界に入った父親が娘の名を呼ぶと、彼を認めた子ども達が瞬時に悪霊となりこちらを見る場面に胸を打たれた。例えば日本の「怪談」について言われる、なぜお岩さんやお菊さんが怖がられなきゃならないの?怖いのは男の方でしょう?というのと同じ問題がここにあるから。

娘を邪険にしていたくせに失踪するとあんなに心配するだなんておかしい、と言ったら多くの人に「そういうものだ」と一笑に付されるだろう。でも私のこの感情こそが作中のイナの気持ちに他ならないはずだ。事情があれど表出しているものが肝心なのだ。全ての悪い大人を代表して子ども達と相対するなんて理不尽を引き受けるハ・ジョンウの姿にはヒーローを見た。