東横落語会



柳亭こみち「四段目」
古今亭志ん輔「小言幸兵衛」
柳家権太楼「幽霊そば」
 (中入)
柳家さん喬「柳田格之進」
 (3/6・ヒカリエホール)


ヒカリエホールでの落語会は初めて。とてもよく、きれいに聞こえるけど、距離というより感じが「遠い」。私はもうちょっと近いのが好き。権太楼の「70を目前にして」という内容の枕は先月も聞いたけど、小さな会場でのお喋りはこの日とあまりに違っていた。
東横落語会に持っていたイメージはもう忘れてしまったけど、この日はしょっぱなっから下ネタ、次いで「二日酔いで」と続く。ホールに繋がるフロアから見下ろした渋谷駅が(酔いの残りのため)気持ち悪いと言っていた志ん輔が、段々「乗って」いくのが分かり面白かった。ともあれ最初の演者からトリに至る流れが、「芝居の噺をする」のを見てたと思ったら芝居を見てるようになってきた、とでも言える会だった。


久々に「柳田格之進」を聞いて、ドラマ「マッドメン」が日本でも話題になった時に見掛けた記事を思い出した(私は見ていない)。「昔」の差別を「今」どう描くかという話。「柳田格之進」は「現代人」にはどうしたって理不尽に思われる内容だから、特に「吉原に身を沈める娘」について演者は色々工夫しており、さん喬版は身請けされるも「後ろ姿は老婆」のようになってしまった娘が番頭と結婚して目出度し目出度しで終わり。「身を売る」ことが大したことではないと思われてもむかつくし、大層なことに思われてもむかつくし、結局のところ一方が一方を「買う」システムにむかついてしまうから、余程の「現代版」に出来ないのなら、私としてはいわば「マッドメン」方式とでも言おうか、当時のまま聞かせてくれた方が心の整理が付く(今そういうふうに演ってる人っているのかな?)ちなみに「現在ならそうはいきません」と時代の穴を埋め、かつ笑いを取るバージョンの志ん朝版も、それは揶揄だから好きじゃない。まあこれこそ「昔の人」に怒ってどうするという話かな(笑)