マザー



楳図かずおファンながら大した感想があるわけじゃないけど、折角見たので記録を。
ともあれ一回目のおろちのポーズのタイミングが完璧!今年の映画の名場面ベスト10、いやベスト3に入るかも(笑・でも「元ネタ」を知らなきゃ妙だよね…)


ホラー映画が苦手で、特に最近のは見ていない私でも馴染める映画だった。有難いとも言えるし新鮮じゃないとも言える。「手持ちカメラ」など流行りの要素もありつつ、クラシカルというか、お話の整合性が取れていて、俗っぽい品がある。それは楳図かずおの昔からの特性かもしれない。
結局のところ「面白かった」かというと、ファンとしては楽しかったけど、やっぱり漫画と映画は違う、という感じを受けた。お話はともかく、漫画なら「存在しない」部分が気になってしまう。何で今グロスてかてかなの?とか(映画のダメさってそういうところに出るものでしょう)


冒頭、母(真行寺君枝)の傍らのかずお(片岡愛之助)の「ねむる時間が長くなってゆきました」というモノローグに、楳図かずおを感じてぞくぞくした。私は楳図かずおの漫画って滑らかじゃない、「止まってる」画を着々と見せていくのが特徴だと思うから、カメラが死体を這っていくところには、動いてる!と面白かった。
世の殆どの物語に描かれる「女」の特別性にはうんざりするけど、彼の漫画を読んでいる時には、オリジナリティの高さと、(映画などに比べ)「彩度が落ち」ていることによりそう気にならない。映像化されたらどうだろうと思いきや、肝心な部分で彩度が落ちたままなので、引っ掛からずに済んだ(笑・例えば普通の「映画」じゃありえない母親への攻撃方法など)


楳図かずおの熱狂的ファン」の若い女性編集者、「若草さくら(!)」の、ガラかめの乙部のりえが実写になったような初登場時の演出には勘弁してくれと思ったけど、演じる女優さんは感じがよかった(舞羽美海という、宝塚の娘役出身の方だそう)。高野山に出向いてレコーダーに録音し始める時の声が、作中のそれまでとは別人のように落ち着いており、びっくりすると同時に嬉しかった。彼女の顔が色んな質感で撮られているのが面白かった。