サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ



デジタル技術の台頭による映画界の変化についてのドキュメンタリー。製作者でもあるキアヌ・リーヴスがホストとして、映画監督、撮影監督、編集技師、カラリストなど作り手数十人に話を聞いていく。有名人が次から次へと出てくる上、「名場面」や撮影シーンなどが見られるのが楽しい。


デジタルシネマの話に入る取っ掛かりとして選ばれたのか、それとも他の意図があるのか、まずは幾人ものコメントの中から「フィルム撮影からデジタル式撮影へ移行したことにより失われた、撮影監督の万能性」とでもいうような部分が提示される。昔は翌日までラッシュが見られなかったため、画面に何が映るかをコントロールし得たのは撮影監督のみだったけど、今は誰もがその場で確認できる、ということの影響について。
何だかんだでジョエル・シューマッカーの「役者がその都度見たがるからうんざりだ、皆自分の髪しかチェックしてないのに!」というコメントが一番心に残った(笑)どんな問題だってそう、ハードとソフトが絡み合って、変わっていくんだろう。


私が全編通して一番面白く感じたのは、ダニー・ボイルの話。監督作「ザ・ビーチ」にどうにも違和感を覚えていた頃、ドグマ95による「セレブレーション」の「カメラの動き」に感銘を受け、撮影監督のアンソニー・ダッド・マントルに連絡を取ったんだそう。人と人との繋がりが生まれるエピソードには、わくわくさせられる。また、マントルはデジタルの手持ちカメラを映画に使おうとした切っ掛けについて、競技場で向かいの客が「ゴシックに」見えたから、と言うんだけど、ボイルもマントルと作った「28日後…」の気に入ってる点として、同じような事象を挙げる。これが面白いなと思った。
更に後に二人が組んだ「スラムドッグ$ミリオネア」が(作中いわく)「デジタル式撮影の映画としては初めてアカデミー賞で認められた」というのも、賞どうこうというより、広く受け入れられたって点で、むべなるかなと思った。うまいこと融合したんだなと。私はドグマの映像には(体が付いていけず)気持ち悪くなるし、ボイルも苦手なんだけど(笑)


80年代に「ハリウッドに傾倒していた」ソニーによるカメラの発明、ドグマ95の面々のインタビューのあたりから、本作は「デジタルシネマ」の歴史を追う形となる。こうした問題に疎い私があれこれに一気に触れ、処理し切れなかったのか、話が自分に近付くほど…つまり時代が下り、劇場や観客の問題になるにつれ、まあ色々あるよなあ、という気持ちになってしまった。実際そういうところもあるのかもしれない。