アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲



見ながら「イレブン・ミニッツ」(感想)のことを思い出していた。世界のあちこちに、同じような映画を撮り続けている爺さんがいるもんだ。本作にはそうぴんとこなかったけど、恵比寿ガーデンシネマで来月上映される「男と女(製作50周年記念 デジタル・リマスター版)」には出掛けるつもり。「愛と哀しみのボレロ」は超、超素晴らしかった、「男と女」は今見たらどうだろう。


オープニングの、インドの雑踏を撮影している男の姿に、渋谷で見ていたので、スクランブル交差点を撮る旅行者なのかと思いきや、彼はインド人の映画監督なのだった。これにフランシス・レイの音楽がかぶると、「何が映っていようとフランス映画です」という宣言になる。
アンナ(エルザ・ジルベルスタイン)もアントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)もそれぞれのパートナーとの「出会い」を語る場面があり、回想シーンが挿入されるのに、この二人が作中初めて揃って登場する時にはもう並んでいるのが面白い。もしルルーシュに何か質問できるなら、このわざとらしいやり方について聞きたい。駅のホームで「再会」した二人が、その後の川辺の場面から突如、ラフな旅行スタイルのせいもあり、どう見ても「フランスの男と女」になっているのも可笑しい。


冒頭、映画監督が自作についてアントワーヌに言う「『ロミオとジュリエット』じゃない、『ジュリエットとロミオ』なんだ、今は何でも女を先にする」とのセリフに、昔の「フェミニスト」とは「女に椅子を引いてやる男」のことだったのを思い出した。どの界隈でもされる嫌な言い様だ。
とはいえ心に残ったのは、終盤、フランス大使のサミュエル(クリストファー・ランバート)がアリス(アリス・ポル)に「男を変えるのは女だ」と言うと、「誰々の言葉ね(誰だか忘れたけど、要するに自分の言葉じゃないってこと)」と去られる場面。「男ですみません」と言われた時の不愉快さは感じず、ちょっとしたルルーシュの今の矜持のように思われた。


アントワーヌが飛行機の中で機長と話をする場面に、私としては強烈なクロード・ルルーシュの匂いというか、「なんだよ突然」感というか、そういうものを感じて面白かった(笑)彼がドキュメンタリーを撮っている男に自分達の映像を消すよう迫るのも印象的。単に「映っていたらまずいから」というふうなんだけど、何だか色々考えてしまう。