世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶



「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」(感想)「ヒューゴの不思議な発明」と3Dものが続き色々思ってたところ、ヘルツォーク監督初の3D作品も公開されてると気付いて、早速観てきた。
1994年に南フランスで発見されたショーヴェ洞窟の内部に残る、3万2000年前に描かれた壁画に関するドキュメンタリー。ヘルツォーク自身のナレーションは、日本公開版ではオダギリジョーによって吹き替えられている。


洞窟内のファーストショットは、入口の方から覗き込んでいる人を内部から見たもの。口の中から歯を通して外を見てるような感じ。以降このアングルは出てこないけど、何となく、やっぱりこれやるのか!と嬉しくなる(笑)
貴重な遺跡を守るため、撮影には厳しい条件がある。「日に4時間×6日間、足場は幅60センチの通路内のみ、スタッフは4人、光源は熱の出ないもの」等々。それでもあれだけの映像が撮れるんだから、3Dカメラやプロのテクニックってすごいんだなあと思った。


馬鹿みたいだけど、なぜ人間は「洞窟」の中に画を描くのか、考えたことなかった(それらだけが残ってる、とも考えられるけど)。彼らは岩の形を活かしてキャンバスにしてたのだから、3D映像での観賞は合っている。触れることは勿論禁止されている壁画が、目の前に迫ってきて手を伸ばしたくなる。
ヒューゴの不思議な発明」の終盤、ベン・キングズレー演じるメリエスの「映画の始まりは洞窟だ」というセリフが聞けるけど、本作のヘルツォークもそのことを口にする。洞窟内の壁画を火で照らし、揺らめく動物を観る、それが映画の始まりではないかと。フレッド・アステアのダンスシーンを引用し、白い壁とそこに映る影は最も原始的な表現手段であり「メディア」だと言う。
「Pina」「ヒューゴ」、そして本作にも、「過去」の2D映像が挿入されているのは奇遇だ。前二作は「その映像を観ている人たち」を3Dで観ることになり、その立体感や手触りが、まるで自分の今いる劇場につながってるみたいに感じられたものだ。本作の場合、そうした「トリック」は無いけど、洞窟の形状そのものが、一種の「枠」のように思われた。


学者たちへのインタビュー(面白い人が多い・笑)、他の古代美術作品の紹介などを挟み、映画のラストには、壁画が更にみっちり大々的に映される。そして川原に立つ若者が、本作の撮影に使われた小型飛行機?に搭載されたカメラ(観客の目)を手で掴むと「本編」が終わる。
しかしヘルツォークはその後「撮影後記」でもって、私たちを強制的に「現代」に連れ戻す。洞窟から30キロの距離に位置する原子炉の温水によって変化した環境で繁殖するワニの話を持ち出し、「壁画を見る我々はこのワニのようなものかも」とシメる。ちょっと意味が分からなかった。


地面を踏むことが禁じられているエリア内にあり近付けない「つらら石」に描かれた画がカメラに映る時、裏側にも何か描かれてるんだろうけど(もしかしたら描かれてないかもしれないけど)、それは見えない。なんて哲学的なショット。しかし終盤、「棒にカメラを付けて裏側を撮ることに成功!」となると、私にとって、ロマンはもう、消えてしまうのだった。


アバター」を観た時には目を覆ったね!というヘルツォークの本作の前に、「タイタニック3D」の予告が流れたのがよかった(笑)タイタニックの方も、予告見る限りあまり迫力無いけど、体に染み付いてる映画だから楽しみ。