任侠ヘルパー



テレビドラマは未見、予告編に惹かれて公開二日目に観賞。近年観た日本映画の中で、一番面白かった!


冒頭の一幕の、草なぎ剛の顔も動きも撮り方も最高で、こんなにベタな場面がこんなに面白いなんて、とわくわくしていたら、全編に渡ってそういう高揚感が何度も味わえる。
この場面が面白いのは、草なぎくんのヤクザぶりを印象づけるためかなあ、ヘルパーの話なんだから…と思いながら観ていたら、ヤクザ描写はその後も続き、なかなかヘルパーにならない。ようやく施設の仕事を始めても、なかなか「目覚め」ない。少々やきもきするも、終盤そんなことは忘れてしまい、振り返ってみれば、色んな要素のバランスが、まさにこれしかないって感じで丁度いいのだった。


映画は草なぎくんの顔のアップで幕を開けるけど、その後も次から次へと、スクリーンに大きな顔が映し出される。草なぎくんは勿論、香川照之など、いつも奇抜なメイクアップで目くらましされてる顔の筋肉の動きがよく分かり、役者なんだなあと思わせられた。映画において初めて、彼(の役柄)の幸せを願ってしまった(笑)
アクションシーンも多く楽しめる。草なぎくんの体の動き、特に脚使いがいい。冒頭のコンビニの場面に始まり、最後の最後まで脚を使って魅せる。洗練じゃなく流麗、それでいて、勢いにまかせて「無茶苦茶やっている」感じがいい。クライマックスが公民館?というのもいい。


安田成美の乗っている車のあまりの汚さ、りりィのズボンの尻というかそのちょっと下のあたりの汚れ、そういうのに引き込まれる。高齢者施設の様子には、話の内容は違うけど、最近観た「桃さんのしあわせ」(感想)の、漫画喫茶みたいな老人ホームを思い出した。
終盤、香川照之が「高齢者が求めているのは『人の感触』なんだ…」というベタなセリフを吐くんだけど、それよりずっと前に、草なぎくんが映画においては初めてちゃんと、高齢者に「触れる」場面があり、胸打たれてたから、そうかもしれない、と思わせられる。「触れる」ということについては、安田成美が初めて草なぎくんに触れる場面もよかった。その後、車で送ってもらう際、心は許してるけど一応距離を取って、助手席でドアの方に体を寄せてる、そういう感じもいい。


笑っちゃうほどかっこいいポスターからして、「任侠映画」でもあるんだろう。刑務所から出てきた草なぎくんが食堂でビールを飲むのは、風間俊介のセリフも含め健さんへのオマージュかな。
任侠映画」ってあまり観ないからか、よく分からなかったのは、お座敷の場面。女が「仕事」中に電話に出る、その相手がヤクザだと分かると草なぎくんがいきなり激するのが、私には唐突過ぎてぽかんとしてしまった。その後の、盛りがついた二人が結局しゅんとなっちゃう、何やってんだ俺…というお笑い?シーンも、「任侠」もののお約束の一つなんだろうか。