アウトレイジ ビヨンド



公開初日、バルト9の夜の回は満席!ちょっとびっくり。


先月、前作がテレビで放送されたので劇場以来久々に観たら、随分面白く感じた。「武の映画はカウリスマキに似てる」とよく聞くけど、全然ぴんとこなかったのが、テレビ放送のため残虐行為の手前で逐一カットされていることにより、アキの映画…というか彼が参照してる先人達の映画に似た空気が生まれていたから。こっちの方がかっこいいと思った。
本作ではそういうとこ、どうなってるだろう?と思っていたら、いわゆる残虐描写自体が殆ど無かった。顔面ドリルの際には「黒い袋」を被せる。前作を思うと、その後の「黒い袋だけ送ってきやがってよお…」とのセリフが何だか可笑しい。


相変わらず素晴らしいセットの中で活き活きと毒づく役者たちを見るのは楽しい。とくに冒頭は、一人一人が登場するたびにニヤニヤしてしまい困った(笑)
刑務所の食堂の制帽やバッティングセンターの事務所の麦わら帽子(チョロがあれ、かぶるのか!と・笑)、死体の後ろに気持ちよく積み上げられたゴミ、ちょっと目を引く取っ手の襖の場面にはふと「ラスト・コーション」を思い出した(襖が出てくるわけじゃないけど)。光の加減で、松重豊の登場時の筆で描いたような顔の陰影や、武がある人物と久々に再会する時の黒目だけに見える瞳など、いいなと思った。


私には、ヤクザのしてることってよく分からないのに加え「最近のヤクザ」ぽいあれこれも出てきて、始めのうちは二重のファンタジーを観てるような感じがした。しかし主に小日向文世の「活躍」により、次第にヤクザがどうとか関係ない、やたら筋の通った話になってくる。随分「きれい」な映画だ。
ただ、後半になると少々退屈してきた。私の好みとしてはどうも、整然としすぎ。前作の椎名桔平枠が居ないのも理由の一つ。あのシャツを着るような男がいないとつまんない、ときめき皆無だもんね(笑)


前作同様、皆のスーツがいかにもしっくりきている。屋敷に入っていく小日向文世のスーツの背中のよれよれ感、次に登場する加瀬くんの襟元のぴしっと感、そして「いつも」の中尾彬(笑)
ものを食べるシーンが多いのもよかった。前作に比べてセックス、暴力などを抑えた「禁欲的」な仕上がりだけど、食べる場面には欲望がストレートに出ている。「会合なのに飲み食い無しかよ/飲みにいこうぜ」…って、しかもそういう店なのか〜とか、男の子はカレー!とか、料亭の残り物あさりとか。武のキャラクターについて「上野育ちだから」とのセリフがあったけど、苦労したであろう過去が、監督としての彼のそれでもあって、食べ物へのこだわりに出てるのかな、なんて思わされた。


ストーリー上とはいえ前作よりずっと抑制された、出てくる女たちの名もなき感、描写の素っ気なさがいい。いびつとも自然ともいえる、一人目の体のゆがみ、二人目の脚のひょろ感。この手の映画であれ以上女を画面に出すと、ああ女って何も楽しいことないな!と思ってしまうから、ありがたい。