クリスマスのその夜に



公開初日、ヒューマントラストシネマ有楽町にて観賞。「キッチン・ストーリー」「ホルテンさんのはじめての冒険」(感想)などのノルウェーベント・ハーメル監督による、クリスマスの一夜の群像劇。


日本での宣伝文句は「おうちに帰ろう」。その通り、エンディングに流れる曲の歌詞は「私はこの先どうなるのか/でも愛してくれる家族がいる/うちに帰ろう」。
ここでの「うち」とは、自分で築いた家庭というより「故郷」というニュアンスぽい。実際作中では久々に故郷に足を向ける人物が出てくる。しかし映画は、将来のために自らのルーツを後にするエピソードで終わる。振り返ってみると、描かれているのはどれも、人生の様々な場面において、「幸せ」、あるいはともかく何かに向かって一歩を踏み出す人々の話だった。


冒頭、テレビでクリスマスのニュースを見ていた男の子が家を抜け出し、とある危機に陥る。彼を狙う銃の引き金に指が掛かったところで場面は変わり「本編」…おそらく数年後の、舞台となるクリスマスの夜へ。どういう状況なのか?あれは「誰」なのか?と悶々としながら観ていると、何とラストにその正体と意味が分かるという仕掛け。面白いけどちょっとずるい。


本作は群像劇といっても、一見オムニバスのようだ。また例えばクリスマスつながりで、ド派手な「ラブ・アクチュアリー」などと比べると、知ってる顔はないわ(おそらく本国ではそうじゃないんだろう)、作中世界の大都市も有名人も出てこず地に足着いてるわ、「コメディ」要素は限りなく控え目だわ(「控え目」ながら無いわけじゃないのがポイント)、あの人とあの人にこんなつながりが!というカタルシスもないわ、とあくまでも上品。それでいて「どうしようもない」ことがさらりと盛り込まれている。


一組のカップルがやたら早い時間から「クライマックス」を迎えている、すなわちセックスしているので、これはと思ったら、やはりそういう「事情」がある。作中のベッドシーンは彼らのものだけだけど、男女ともに、少なくとも体型は「普通」ぽい。偏見だけど北欧映画って、「普通」ぽい役者さんが出てくるのがいい。「ミレニアム」だって、愛人関係にあるミカエルとエリカの容姿があれだからこそ好きだったものだ。