マジック・マイクXXL



前作は何だったんだというくらい、百億倍よかった。見終わった今の気持ちとしては、今年のベストワン。皆が笑顔、笑顔、笑顔になるためのロードムービーだった。ステージでの「笑顔になったね」には泣きそうになってしまった。


作中初のダンスシーン、あの時、世界にチャニングと私しか居なかった。その快感は、彼がこちらを見ていないから。冒頭のモーテルの部屋で、ダンスシーン最初のチャニング同様に顔を隠した「White Shadow」のことを男たちが見ていない、けど同じ場に居る、あの気持ちよさと通じるところがある。それから「ローマ」(ジェイダ・ピンケット・スミス)の館での晩、勿論大会前だからというのもあるけど、面々が全員、男達と話し込んでいるのもよかった。


「1ドル札の津波に溺れよう」と出発した面々がローマの館で見るのは確かにお札の海。金をくれるからこその女、この割り切りもまた気持ちがいい。しかし話は予想を裏切っていく。金の嵐の中でもある種の「愛」が流れる。ローマいわく「大会なんて私には何の意味も無い」、確かに見ている私にとってもそうだ、車やホテルのゴージャス感にお祭りとしての楽しさはあるかな、なんて思っていると、更に予想を裏切っていく。大会には大いに意味がある(ローマにとっても、多分)面白い、というか新しい映画だった。


ローマの館を去る時のマイクは、「行かなくちゃ/なぜか分からないけど楽しかった」なんてセリフから分かるように、自分の気持ちが掴めていない。しかしゾーイ(アンバー・ハード)とのやりとりの後に「Mike, Magic Mike」と出ていく時には、他の面々と違い言葉にはしていない、ある気持ちを自覚したのかなと思う。ちなみにこの「名乗り」とローマの登場シーンは007シリーズのパロディのようだ。更にちなみにアンバー・ハードについては、こんな映画に出ておいて、ジョニー・デップなんて、年があんなにも上の「権威」ある男と結婚してる場合じゃないと思う(笑・いやジョニデにもいいところがあるのかもね)


映画はマイクの顔に始まり、マイクの顔に終わる。彼が、いや彼だけじゃなく皆があの顔になるための物語だと言える(ただし「屈託の無い」頂点をちょこっと過ぎた表情で終わるのが「アメリカンニューシネマ」ぽいとも言える)作中マイクだけじゃなくそれぞれの表情をしっかり捉えたカットが挿入されるのが、映画の心を表している。「踊れない」ターザン(ケビン・ナッシュ)が作中初めてステージに上がる前の顔や、アンディ・マクドウェル演じる「セレブ熟女」の、特に何か発言するわけではないが初めての「場」に心躍らせる友人の顔など。


仲間たちとの朝の場面が二回、どちらもとてもいい。それまで彼らを見る側だったのが、この時には自分がその一員になったような気がする。海辺と昨日知り合った人の家と、どちらも「知っている」場所だと思う。「女」の私がそんなふうに思える映画はいい「男の友情もの」だと思う。作中のあらゆるカットの頭の部分、特にマイクの「寝起き」に強烈なソダーバーグの匂いを感じていたら、編集は彼が担当したらしい、なるほど。