ちいさな哲学者たち



フランスのとある幼稚園で始まった「哲学の授業」を追うドキュメンタリー。


冒頭、子どもたちはゲームだなんだでモニタを日に何時間眺めてるだの、政府がどうしただのといった、世にあふれている報道文が流れる。最後に「幼稚園で哲学の授業を行う」試みに対する「子守に修士の資格が必要だろうか?」という揶揄めいたセリフ(誰が言っているんだろう?)が置かれ、ろうそくに火を点すという授業開始の決まり事に続き、子どもたちが映し出される。


映画は哲学の授業を見せるだけでなく、幼稚園の他の時間や家庭での子どもたちの様子、地域の風景などが挟みこまれている。授業を担当するパスカリーヌ先生と同僚との会話からは、いわゆる大人の事情も窺い知ることができる。きれいにまとまってるけど、ほとんどは子どもの顔が言葉とともに大写しになってばかりなのに飽きてしまった。映画としては、もっと色んな側面からアプローチした方が面白いのにと思う。私としては先生側の心情が知りたかった。


「大人とは何か」というテーマにおいて、ある子が「大人は写真を撮れるけど、私は小さいから撮れない」と言う。「小さい」ってどういうことなのか、「小さい」となぜ写真が撮れないのか、掘り下げたらすごく面白そうなのに、先生はそれを意見の一つとして次に進めてしまう。それで「哲学」といえるんだろうか?と思わされる、このようなケースが目立った。もっともあの段階、あの授業形態ではそれが「最善」なのかもしれない。
そもそも「哲学」を扱うのに、場面を切り取るというのはふさわしくないように思われる。掘り下げ部分を(実際であれ、映画上であれ)省略すると「キメ台詞」の羅列になるから、子どもの大喜利大会のように見えてしまった。


最後は一人の女の子が「この間、砂場で友達と『死』と『愛』について話したの」と言うのに続いて、ろうそくの火が消えるカットでエンドクレジットへ。彼らは語り合う習慣を身に付けたというわけだ。
なぜか心に残ったのは、コンクリにバケツで水をぶちまけただけの水溜りで、子どもたちがやたらめったらはしゃぐ場面。すごくいいなと思った。