ロスト・アイズ



ギレルモ・デル・トロが製作し、スペインでヒットしたという作品。進行性視力低下の病を抱える主人公フリア(ベレン・ルエダ)が双子の姉の自殺の謎を追ううち、自らも不穏な影につきまとわれるようになる。原題「フリアの眼」。
予告編からクールな印象を受け期待してたら、思いがけずアツい映画だった。とくにラストはトンデモ一歩手前…これはデルトロの味かな?それはそれで面白かった。


全体の印象としては、サスペンス9割、ホラー1割といった感じ。前半は、姉に同行していた恋人を探すも誰もその男を覚えていないというストーリーが描かれる。一見いわゆるジャンル「幻の女」なんだけど実は全く違う、この部分が物語のキモだ。実直そうなパートナーに加え、周囲の人物も協力的なので「ひとりぼっち」感はなく、変な言い方だけど雰囲気は温かい。地味な展開だけど面白い。
主人公が女子ロッカーに忍び込み、ほぼモンスターとして描かれる盲人たちに紛れこむシーンが傑作で、これだけでも観に行ったかいがあった。ただ目が見えない者がそんなに鈍感か?という疑問も抱いてしまう。そうした綻びのようなものは、最後まで点々と在る。
「ホラー1割」というのは、とくに前半で繰り返される「瞬間移動(?)」などの「有り得ない」描写。これにより「サスペンス」にぴりっとした味付けがなされている…よくも悪くも。


後半になると、次第にもっさり度が上昇。そもそも手術直後で目の見えない(包帯を取ることのできない)主人公が、安全な病院でなく、大して馴染みもない「姉の家」にこだわるのが納得できない。加えて、色々ちょっかいを掛けてくる「怪しい」人物たちの扱いも中途半端。
結局のところ「自分が『見られる』のは具合が悪いから、自分だけが『見る』側でいられる関係を作ろう!」という男によって多大な迷惑を被るという、ミソジニーを柱とするストーリーなんだけど(そんなこと言ったらこの手の話は皆そうだけど/「彼」にも「事情」があるんだけど)、見ていて嫌悪感を覚えないのは、これも作り手の性分なのかな?
「盲人にしか気付いてもらえない」男は、眉毛の薄さがイヤな感じを増幅させてた。わざと抜いたんだろうか?


ベレン・ルエダが(主役として)登場時、巻いてたスカーフを解くと、あばら骨の浮き出具合がすごい。彼女の服装、とても好みだった。本作では、服装込みで、陰性のカトリーヌ・フロという感じもする。
ちなみに一箇所、何の脈絡もなく看護婦の歩く後ろ姿を延々追うシーンがあり、主人公と似た感じの格好なので、作り手の好みなのかなと思った(笑)