ウィンターズ・ボーン




「お金のためじゃなく、もっと『ちゃんとした理由』がないとダメだよ」


アメリカ・ミズーリ州の山中。病んで口を利かない母と幼い弟妹の面倒を見ている少女リー(ジェニファー・ローレンス)のもとに保安官がやってきた。懲役刑を宣告された父の失踪により、保釈金の担保である家と森が近々差し押さえられるという。リーは近所の家々を訪ねて父の行方を追う。


(ネタバレってほどじゃないけど、色々触れてます)


暗いばかりの映画かと思ってたら、リアルというよりよく出来た話で面白かった。とある人物が変化し主人公と共に立つようになるという流れもあって、温かさも感じられる。
始まって程なく「父親を探さなければ」という問題が発生、最後までサスペンスが続く。よその家を訪ねると必ず門番みたいな「女」が出てきて「男」は忙しくて会えないと邪険にされるのが、イヤなおとぎ話のよう。


冒頭、リーは弟妹を前に「シカのシチューでいい?作るところを見てるのよ」と料理を始める。その後も銃の使い方やリスのさばき方などを「伝える」。そしてラスト、弟は姉のとある行動について知っており、自分なりに頭を悩ませていたことが分かり、妹は父が残したバンジョーを手にする。このへんのつながり、終わり方もきれいだなと思った。


「あらすじ」を知らずに観たためリーの年齢を知らなかった私にとって、終盤ある人物が彼女に「君は何歳?」と聞くタイミングが絶妙だった(その後の彼の微妙な態度の変化が面白い)。演じるジェニファー・ローレンスは様々な表情を見せるが、中でも印象的なのは、突然男にアゴつかまれたり怒鳴られたりした際のびっくりした顔。その時だけ子どものようだ。
始め、リーが訪ねる軍の施設や近所の女性たちのたるんだ容姿に、ああいう顔や体でこそああいう暮らしに馴染めるんじゃないか、ジェニファーは役に合ってないんじゃないかと思ったけど、観終わって、だからこそ彼女はこの物語の主人公たりえたんだと納得した。「変な噂に困ってるんだ」「私は何も言ってないわよ」「分かってるけど」/「変な噂を流さないでくれ」「あんたの話なんかしないわ」。彼女は実体のないものには流されない。


こういう映画はセットが「面白い」ものだ。父の衣装掛けに並ぶ針金ハンガー、ぶっつり重たい弟の髪はリーが切ってるのか?買い物シーンなどは一切出てこなかったけど、「フローズン・リバー」に日本で言う100円ショップのような店が出てきたのを思い出した。