ウッドストックがやってくる!


アン・リーの新作というので楽しみにしてた作品。やはり良かった。
両親経営の古ぼけたモーテルを手伝う青年が、ふとしたことから地元にウッドストック・フェスティバルを誘致する。「主人公」の手による小説を基に制作。映画「ウッドストック」は学生時代に観たけど、この実話については知らなかった。



印象に残ったのは「男の優しいまなざし」。女のそれもあるけど、主人公が男ということもあり、男の…男と男が見つめあうまなざしがそこかしこに散りばめられている。主人公始め、それを主眼に役者を選んだんじゃないかと思ってしまう。
静かな「優しさ」に満ちた空気に、当時のギター中心の楽曲がよく合っている。ギターの音ってこういう顔を持ってたんだ、と気付かされた。


ヘリコプターで登場し、その後バイク、馬と色々な物を乗りこなすフェス主催者のマイケル(ジョナサン・グロフ)は、主人公エリオットの守護天使といった趣、どことなく「ボーイズラブ」っぽい空気も感じる。最近なら「約束の葡萄畑」(感想)のギャスパー・ウリエルといったところか(何かを与えてくれるわけではなく、寄り添ってるだけという点でも)。
エリオットと父(ヘンリー・グッドマン)、あるいは母(イメルダ・スタウントン)を含めた家族の関係描写は、アン・リーお得意のそれ。その他、ベトナム帰りの友人を演じるエミール・ハーシュ、エリオットの元恋人の新恋人の元恋人(笑)のリーヴ・シュレイバー(イイ顔!)など、いずれもいい味を出している。


フェスティバルが始まるまではエピソードが手短に積み重ねられていくが、それ以降は、エリオットの体験の幾つかが、それまでになく時間を掛けて丁寧に描かれる。いわゆるドラッグを使うシーンが何度か出てくるけど、こんなにやりたくなる映画ってない(笑)前半の、マリファナ吸った際の「感じ」もよく撮られてたけど、後半の、会場でドラッグをやるシーンがすごくいい。手作りのものを身の回りに置いとくと、ハイになった時に自分の作ったものに違う息吹が宿るところが見られて面白いなあ、などと思いながら観てた。
また、彼を会場へ送ってくれる警官がヘルメットに花を(おそらく誰かの手によって)飾ってるんだけど、このシーンから、ヒッピーが「花」をシンボルにする気持ちが何となく分かるような気がした。


作中、フェスティバルのステージは出てこない。エリオットが感動するのは「人の海」。それを表すCGのセンスのいいこと、ハイセンスって意味じゃなく、控えめに使うあたりが好みだ。