冬の小鳥


1975年、ソウル郊外。9歳のジニは父に連れられて児童養護施設にやってきた。置いていかれた彼女だが、父親の迎えを信じて周囲に溶け込もうとしない。



ジニ役のキム・セロンがめちゃくちゃ可愛い!私が女の子に惹かれるなんてめったにないことだから(笑)(私にとって)よっぽど可愛いんだろう。ずっと見ていたくて、どんな内容であれ、映画が終わってほしくなかった。


オープニング、父親に抱きかかえられて自転車に乗るジニ。素晴らしい笑顔。誰にでも、子どもの頃の「場所」と「匂い」がある…なんて、なまぬるい理想だけど。中盤、朝の礼拝時に同席していた親子連れに、ジニは目をやる。しょぼいお父さん。だけど、子どもには唯一の拠り所だ。


施設に初めて足を踏み入れた際の他の子たちからの視線、集団生活の様子、主人公が馴染んでいく過程など、俗な言い方をすれば「施設もの」につきもののあれこれ、登場人物の言動や感情の表れが丁寧に撮られており、面白かった。
子どもたちは皆ほとんど同じおかっぱ頭、「サイズが合う」ことしか考慮されない着古された服。「自分のため」のものはない。ジニは買ってもらったよそいきを脱ぎ、髪を切られた…「切らせた」時、閉ざしていた口を初めて開く。


子どもって、友達同士、しじゅうふざけたりいたずらしたり「面白いこと」をしているわけじゃない。ただ一緒に居て、色々するだけ。そういう感じが出ているのが良かった。
また、彼らはおそらく自然に、年長者をリーダーにしているが…言葉を代えれば、子どもの間では年長者が「権力」を持っているが、「お姉さん」であればあるほど、養子に「もらわれる」可能性は低くなり、将来の不安も増す。養子を取る側だって誰でもいいというわけにはいかないから、「選別」の場が生まれてしまう。それが切ない。私の感覚からしたら、皆を集めて気に入った子を選ぶなんて、よく出来るなあと思ってしまうけど…


私は子どもが得意でないこともあり、ああいう所で働いている(暮らしている)人ってどんなだろう?と思ってしまう。世話をしている女性は多忙なせいもあってか、ごく適当に子どもの相手をしている風で、そのへんも観やすい。ただワンショット、彼女の感情が強く表れたシーンがある。最後にジニに対し「小食なのに大きくなったねえ」と「のばして」くれる服も印象的だ。
子どもたちは、養子としてもらわれていくにせよそうでないにせよ、皆施設を出て行く。シスターや職員はその場に残る。「出て行く者」と「残る者」の存在する映画って惹かれる。


あらためて予告編を観たら、一番はっとしたシーンの直前でちゃんと切られていた。