スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話


世界一タフじゃなきゃ務まらない仕事人の話に、ヴァンサン・カッセルレダ・カテブがはまっていた。斜めに座って監査局の調査人を迎えたブリュノ(カッセル)いわく「それじゃあなぜ皆はここに連絡してくるんだ、頼るんだ」。映画の終わりに出る「代替手段がないため政府は彼らの施設を暫定的に認めた」との文章に何とも言えない気持ちになった。

例えばよい学校映画には一分一秒がいかに大切かということが伝わってくる場面があるものだけど、この映画もそうだった。ブリュノがジョゼフを職場に送る車内など、寸分も時間を無駄にしないよう行動しているのに、何というかすごく善いものに満ちている。「肩にもたれてもいい?」(の後、もたれる)に「もういいかな」なんて返答しようと揺るがない。

ジョゼフの母親が言うには「人には二種類ある、目を掛けてくれる人達とそうでない人達」。ブリュノの信念は、ともすれば「監禁」されてしまう自閉症の子ども達を少しでも外に連れ出すこと。その出先の、駅やレストラン、あらゆる公の場において、確かに世界は二つに分かれて見えた、レイヤーが違うみたいに。ホテルから逃げ出したヴァランタンを皆が捜して駆けまわる街も。

若者らによる報告書の文章の乱暴さを指摘するマリク(カテブ)が自身は調査人にぞんざいな言葉を使ったり(わざとそうしてやろうという気もあるんだろうけど)、ジョゼフが職場で女性に惹かれていることに気を揉むブリュノが施設の子どもの姉に粉を掛けたりするのは、あらゆる人々が同じようないわば欲望を持っているということの表現に私には思われた。