ブロンド少女は過激に美しく


撮影中に100歳を迎えたというオリヴェイラ監督の作品。リスボン発の列車内で、とある男が隣の女性に語って聞かせる「妻にも友人にも言えないような話」。



「見知らぬ人の身に起きたことなんて、想像もつきませんわ」



こういう映画好きだなあ!列車ものとして「明日へのチケット」(感想)に入っててもいい(笑)話そのものは、原作は知らないけど、サキの短編のような味わい。
隣席のマダム(レオノール・シルヴェイラ)は始め、盲目なのかと思うほどあらぬ方…あるいは「こちら」を向いているが、主人公(リカルド・トレバ)が恋に落ちるあたりから、彼の顔に視線を向け話を促す。


オリヴェイラの映画って数本しか観たことないけど、テンポが独特だ。オープニングとエンディングの(「普通」の映画を見慣れた目には)一種異様に映るワンショットの長さ、場面転換で挿入される遠景が、ご丁寧にも「朝」「夕」二つ重ねられるかと思えば、恋の予感に主人公が窓辺で踊る姿が延々と続いたあげくぶちっと切れて次の場面へ。まるで、のんびり歩いてる人が突然立ち止まったり、飛び上がったりしてるよう。「余裕」があって「自由」だ。例えばあの「彫像」には、何か意味があるのかな(有名な人物)?随所に表れるマイペースぶりが可笑しく、にやにやしてしまう。
また、主人公と叔父、主人公と客人が必ず横並びで画面に納まる様は、エジプトの壁画か何かで顔の前と横を一緒に描こうとしてああなりました、とでもいうような「妙」を感じる。同時にこの映画で語られる物語の内容…世界と交わらず「並行」して進む主人公の姿を表してるようでもあった。


主人公と少女が初めて会話を交わす場で流れるのが、ハープによるドビュッシーアラベスク第1番。ベタだけど、子どもの頃、あの曲をピアノで弾くのが大好きだった。


64分と短いこともあってか、事前にゴダールの短編「シャルロットとジュール」が上映されたんだけど、こちらはあまり好みじゃなかった。狭いアパートにやってきたガールフレンドに、ベルモンドが延々喋り倒すという内容。人んちでアイスなめるな!と思ってしまった(笑)