インセプション



新宿ピカデリーにて先行上映を観賞。ほぼ満席だった。
他人の夢に潜入しアイデアを盗み取る産業スパイたちが、アイデアを「植え付ける」(=inception)という難れ業に挑む話。加えて、業界屈指の才能を持つ主人公コブ(レオナルド・ディカプリオ)が抱える個人的な問題の解決が描かれる。スパイチームのキャストは他にジョセフ・ゴードン=レヴィットトム・ハーディエレン・ペイジなど。


私にとっては、面白いけど、観るのが難しい映画だった。「夢」「潜在意識」って何だろう?などと考えず(どのみち考えたところで、基となる知識があるわけじゃないから無意味なんだけど)、作中のお約束と構造を理解しなくちゃいけないから。


そもそも映画において、「夢」であることを大々的に謳って破天荒なことをするのって、少し幼稚な気がする。でもそれをあそこまで見ごたえある画と編集で描いてみせる、そのいびつさが魅力的。マリオン・コティヤール演じるコブの妻の「列車が…」の言葉の意味が分かるシーンには震えた。
話のキモは「夢の中の夢」。例えば、睡眠中の人間を風呂に突き落とすと、彼の夢の世界では洪水が起きたり雨が降ったりする(これは確かにありそうなことだ)。ならば、夢の中で夢を見る場合はどうか?この映画においては「上の層(夢1)」の出来事が「下の層(夢1の中の夢)」に影響する。夢の中で車が宙に浮いていれば、さらにその中で見ている夢の世界では皆が無重力状態だ。そういうもんなのか…と思いつつ、なんだか滑稽で笑える。でもその「壮大な馬鹿」設定のおかげで、登場人物に「超能力」を使わせることなく、「現実味」を保ちながら、荒唐無稽で楽しい見せ場を提供できる。


キャスティングも豪華。まずは冒頭、レオとジョセフ、ルーカス・ハースという、私にしてみれば「この間まで高校生やってたような男の子たち」が真面目くさった顔で仕事の話してるのが、可笑しいやら感慨ぶかいやら。ルーカスが消えると、ケイン様の元気なお姿と声を挟んで、キリアン・マーフィが無垢な坊ちゃん役として華を添えてくれる。どこを見回しても楽しい。


合間合間にちらっと挿入される、皆の寝顔も見どころ。機内で彼らの世話をしてた女性にしてみれば、あんな「ド派手なこと」があった間、皆の寝顔を見てただけだったんだよなあ…と思うと可笑しい。