クロッシング


みどりの日」に銀座シネパトスにて観賞。ほぼ満席だった。



北朝鮮の炭鉱の町に暮らすヨンス(チャ・インピョ)は、肺結核を患った妻の薬を入手するため中国へ渡る。しかし誤解により「亡命」してしまい、家へ戻れない。その間に妻は亡くなり、一人残された息子ジュニは父に会うため国境を目指すが、強制収容所に収監される。


冒頭に描かれる、北朝鮮の「普通」の人々の風景。貧しくとも家族三人、楽しい暮らし。私からするとボーイ・ガールスカウトのような制服姿で歌いながら歩く子どもたちに、それこそ日本の「ALWAYS」のような、教育的意味合いをも含む、イメージビデオのような印象を受けた。「脱北者の話」というだけの前知識から、勝手にドキュメンタリータッチのものを想像していたので意外だった。


しかし、この国の家族の笑顔はもろい。他の国では乗り越えられる問題が、全てを崩す原因になる。
直接的には「(北朝鮮では)薬が買えない」という理由から、父は国境を越える。その後は、父と息子のけなげさ、適度なスリルが(不謹慎な言い方だけど)楽しませてくれる。「雨」や指輪、サッカー、靴といった映画的グッズ、感傷的な音楽、スローモーションなどが駆使され話が進むけど、全てが「本当にこうなんだろうな」という感じで説得力がある。「映画っぽい」がゆえに、観ている間は憂鬱にならないけど、後で考えたら、自分はどうしたらいいのか分からなくなる。


「国境越え」が何度か出てくるけど、最後にジュニが越えるのは、砂漠に貼られたそまつな鉄条網。そのあっけなさが哀しい。
また、暴力を行使する「国」側の人々が、銃を持ちながら、「裏切者」を手足でぼこぼこにするのも印象的だった。