渇き



武蔵野館にて観賞。平日の夜、20人程の入り。


人体実験に志願したことから「バンパイア」になった神父のサンヒョン(ソン・ガンホ)と、幼馴染で今は人妻のテジュ(キム・オクビィン)。久々に再会した二人は惹かれ合い、テジュの夫ガンウの殺害を企てる。


他の多くの映画のようにジャンルでくくれない、色んな要素の混じり合いが、心をあちこち揺らしてくれ面白いんだけど、私にとってはたんに「浮いて」感じられ馴染めない部分もあった。
まずは冒頭、後に「いい人だけど意識がない」ことになる彼の歯があまりにきれいで、心がくじけてしまった。裕福に育った過去があるのかも…と想像するのも意味がない。
病室で義母がサンヒョンに向かって自分について語るのを聞いている、画面に大映しになったテジュが、漫画みたいな表情で顔をしかめるのにも、違う意味で違和感を覚えた。それから、店のガラスに顔型の広告?が貼られた後ろに(顔が重なるように)彼女が立つシーンも、懐かしめのスタイリッシュな映像って感じで意表を突かれた。パク・チャヌク監督作の場合、アイドル発掘映画でもあるってことなのかな。


観終わってすぐは「日の出前、見渡す限り何もない崖っぷちで、男と女が○○を奪い合っています。さて何があったのでしょう?」というウミガメのスープを映画化したようなものだと思った(笑)飛躍感。厄介な者同士がめぐり合ってしまった、それも悪くなかった、という話。
相手のすること(この場合、殺人)が気に入らないなら別れればいいのに、「僕には君しかいない」なんて、頭をかちわってでもそれを止めるサンヒョン。神に仕える者って分からない。一方のテジュは「信仰がないから地獄へは行かない」と言い切り、最後にサンヒョンに「地獄で会おう」と言われると「死んだら終わりよ」と答える。


「頑なに脚を開かない男」ってめったに見ないから(笑)ガンホといえどもぞくっとさせられた。「はげしすぎたかな?」には笑っちゃったけど。