湖のほとりで


銀座テアトルシネマにて。平日なのに始め満席で観られず、翌日の予約をして帰った。当日もまた満席だったから、びっくりした。なんでこんなに混んでるんだろう?



北イタリアの小さな村の湖のほとりで、17歳のアンナの死体が見つかった。着任したばかりの刑事サンツィオは、捜査を進める中、村人たちの様々な事情を知ることになる。


何度か遭遇した予告編から「ツイン・ピークス」やバーナビー警部シリーズを連想してたけど、全然違ってた。つつましく、シンプル。生と死、愛情、家族。


小旅行に出掛けると、行った先の土地に人々が(当然ながら)暮らしていることが、不意に胸を打つことがある。この映画の冒頭の雰囲気に、そういう気持ちになった。
アンナの寝顔や死姿、認知症であるサンツィオの妻の様子などこざっぱりと綺麗で、決してリアルというのではない。映像も音楽も、美しく制御されている。


刑事サンツィオの登場に、先月読んだ「ミステリーの人間学」(ここに少し記録)を思い出した。いわく「探偵小説は、他人を追い詰めつつ自らは無傷であることを可能たらしめる、文学上の装置である」。しかしサンツィオも事情を抱えている。だからこの作品は、人々の隠していることを暴いたり、謎を解いたりする面白さを味わうものではない。



「姉は私とは正反対だったわ」
「では(お姉さんは)不美人だった?」


アンナの妹とサンツィオとの会話。彼のキャラクターからして、茶化したとも、妙な誉め方をしたとも思えず、何だかよく分からなかった(笑)