エージェント・ゾーハン


アダム・サンドラーと、彼の繰り出す下ネタが最高にキュート。ここ10年の彼の主演作で一番面白い。
モサドの凄腕エージェント、ゾーハン(アダム・サンドラー)が美容師になる夢をかなえるためニューヨークにやってくるお話。監督はデニス・デューガン



舞台はロウアー・マンハッタンの、通りを挟んでイスラエル人とパレスチナ人が店を並べるエリア。ショッピング・モールの建設を計画中のアメリカ企業が、彼等の反目を利用すべく狙っている。
そこへふらっと現れた…というか、やっとのことで美容院の下働きにありついたゾーハンは、オーストラリア人を偽り、「豊かな茂み」も活かしたエロサービスでおばさま方の人気者に。オーナーのダリアに恋もする。
しかし彼に恨みを抱くパレスチナ人のタクシー運転手(ロブ・シュナイダー)や宿命の敵・ファントム(ジョン・タトゥーロ…エンドクレジット見るまで誰だか分らなかった)が現れ、一方で「アメリカ」はメル・ギブソン(「リーサル・ウェポン」)を崇拝する右翼団体を雇って町の破壊を企んでおり、辺りは一触即発…という盛沢山な内容。



ロブ・シュナイダーとその仲間、アダムの子分風のチビ男(見てると心がけば立つ感じのイイ顔)を始め、出てくる皆が憎めない。次々と繰り出されるギャグも、アクが強めのものから分かりやすいものまで(タクシーに一体何人乗ってるんだ!とかああいう単純なのって好き・笑)バランスが取れており飽きない。イスラエルネタも、あれだけしつこくやられれば心に残らざるを得ない(笑)
21年前のヘアカタログを大事にしているアダムのセンスは(いつもながら)80'sそのもので、使われる音楽もアダム・アントやヒューマンリーグなど。クラブで流すのはロックウェルの「Somebody's watching me」。このシーンに限らず、アダムのダンス…というか動きが全編通して(もしかしたら最大の)見もの。


いわゆる下ネタについては、ドラマや漫画で「実はマッサージだった」というシーンを見るとむかついて電源をオフにする人(私)にとっては気分が良くなるような爽快なものばかり。アダムの「猫のトイレ」シーンと、「肩をあっためるサービス」(それを見つめるロブ)のシーンが特にお気に入り。
ちなみにゾーハンは、追跡劇の最中に迷惑を掛けた商店主に「政府が補償金を出します」カードを渡したり、子供のために「ストーンアート」を作ってあげたりするようなエージェント。そういうピースフルな男が、同時にエロい(この場合、自らの肉体もある程度エロく、更にそれを「女性」に提供することをサービスと捉えているということ)というのにまず満足させられる。当たり前ながら、人間の性分は色んな要素が組み合わさっているのに、フィクションにおいてはお決まりのことが多いから。
そして、「モテモテ男」の役に合わせてジムに通い、割れた腹筋で撮影に臨むのがアダムの偉い&好きなところ。ウィル・フェレルならそのままやっちゃうでしょ?(笑)


ストーリーのさほど大きな要素ではないけど、「立ち退き」映画としては、例えば「僕らのミライへ逆回転」のようなセンチなものより、お笑いに徹したこういうラストの方が、私はずっと好きだ。


アダムが飛行機内で自分の髪を「アヴァロン」風にカットするシーンに、男の人のそういう姿っていいなあと思った。あまり見ないよね。


アヴァロン(紙ジャケット仕様)

アヴァロン(紙ジャケット仕様)