ピクセル



祝日の夕方のTOHOシネマズ新宿にて、小さめのスクリーンながらなんと満席。まずは「Happy Madison」のあの映像をこんな立派なスクリーンで、しかも3Dで見られるなんて!と感動。引っ越し後の久々の映画鑑賞だったことも手伝ってか?とても満たされた。
大スクリーンじゃなくてもいいけど中くらいのところでは見たいクリス・コロンバス感に、アダム・サンドラーのいつもの80年代ネタ、「有用」じゃないやりとり、基本精神がバランスよく混じり合った楽しい100分。「インドに警告くらいはしといたほうがいいんじゃない?」なるセリフがこの映画のサイズ感を表している(笑)


オープニング、少年(後のアダム・サンドラー)が自転車の首?をくいっとあげるのに、私にとってのあの時代、要するにアンブリン・エンターテインメントを感じてわくわくする。続く一幕の小芝居感にも期待が高まる。
私はドンキーコングすらプレイしたことがなく、ゲームについては無知だけど、本作はゲームそのものというより「あれらのゲームがあった、あの時代」を題材にした映画なので、全然面白かった。尤も私は80年代でも後半を生きた人間で、岡崎京子じゃないけど80年代は前半と後半じゃ全く違うから、分からない部分もあったろうけど。


ケヴィン・ジェームズ演じる大統領が祝勝会に登場した時にサンドラーが口にする「お前は皆に愛されてるな」というセリフこそサンドラー映画、というか彼自身を表している。登場時に店から出てきた場面(「貧乏人の敵!」などと罵られる)で分かるように、その仕事ぶりは「政治的」には全くもってダメだけど、愛さずにはいられない。サンドラーってそうでしょう(笑)
ベクデルテストにパスするどころか、この映画の彼は、ミシェル・モナハンに対してその容姿についてしか言及しない。モナハン演じる「ヒロイン」や他の「美女」が、男が「英雄」になった途端にころっと参るのも何なんだよと思う。でも例えば祝勝会でのあのやりとり、ああいうのずるいよね、絶対心を許してしまう。


モナハンに「あなたが富豪だったら100回はキスしてる」と言い返された後の沈黙が、本作でのサンドラーの最も雄弁な瞬間だ。彼が「負け犬」なのはオタクだからじゃない。そのわだかまりが、いわゆる「ラスボス」との闘いに際し溶けていく。足りなかったのは「あの時」に欠けた自信だったと分かるその瞬間、ほろっとして涙がこぼれてしまった。