ベンジャミン・バトン 数奇な人生


試写会にて観賞。事前にイーストウッドグラン・トリノ」の予告編を初めて観た。短くてよく分からなかったけど、楽しみ。



老人の姿で生まれ、年を経るごとに若返るベンジャミン(ブラッド・ピット)と、彼の愛した女性デイジーケイト・ブランシェット)の物語。
ほどよいファンタジーとユーモア加減、主演二人の雰囲気、映像など見事だと思った。好きなタイプの映画(フィンチャーの作品では初めて・笑)。ベンジャミンの登場が窓辺のシーンで終わりなら、尚よかった。


とくに前半は、夜と影を味わう映画でもある。「人生で大事なことは、全て夜に学んだ」とでもいうように、ベンジャミンは暗がりの中で多くの経験をする。子どもの頃は、皆が寝静まった老人ホームの中を車椅子でうろつく。長じてロシアの古ぼけたホテルでの、人妻(ティルダ・スウィントン)との毎夜の逢い引きの描写も素晴らしい。彼女が二日目の晩から身に付けてくる、真珠のネックレスが印象的だ。当時もああいう長さのが流行ってたんだろうか?
そしてベンジャミンに何かを告げてくる、陰になって見えない顔の数々。愛する人のシルエット。


物語は1918年のニューオリンズに始まり、世界各国を巡り、21世紀まで続く。その間ベンジャミンの外見は老人から中年になり、やがては子どもになる。
ニューヨークに渡ったデイジーはモダンバレエに熱中し、再会した際のおしゃべりに、エドガー・ケイシーやロレンスの名を持ち出す。第二次世界大戦中、船員のベンジャミンはある日を境に海軍の一員となり、Uボートの攻撃を受けるはめになる(このくだりはとても面白い)。60年代後半、二人はメゾネットタイプの住宅に引っ越し、テレビでビートルズを観ながら寝転がる。


話の内容には関係ないんだけど、ベンジャミンの場合は年を取るに従い、身体は青年、心は老年に近付いてゆくわけだけど、ファッションなどの捉え方はどうなるんだろう?体が若ければ脳内年齢?に関わらずそれなりの服装になるのかな?また、自分がどんどん若返るとなれば、若さは「失う」ものではないから、美的感覚なども違ってくるのかな?などと考えた。
戦争で命を落とす船長に対してベンジャミンがかけるちょっとした言葉に、彼の実年齢や生育歴を思い、しみじみとしてしまった。


助演女優賞を受賞したタラジ・P・ヘンソン演じるベンジャミンの養母は、「奇跡」を信じる者。だから何だって受け入れる。十数年ぶりに戻ってきたベンジャミンを「誰?」と訝る実の娘に、「あなたのお兄ちゃんよ」とあっさり言ってのける場面が可笑しかった。


若者から老人まで(あるいは逆)を演じる主役二人の顔に関する特殊効果は、とくに若いときのものが良かった。ブラピは目の下のたるみが無いと、本当に昔に返ったよう。更に若返った彼を見て、デイジーは「perfect...」と口にする。



「永遠はあるわ」
「…おやすみ」