おくりびと


実家の母親とメールしていたら、敬老の日に祖母の希望でこの映画を観に行くと言う。両親はたまに一緒にシネコンに行っているようだけど、祖母が映画なんてめったにないこと。死期が近づいてるから興味があるんだろうか?もっとも昔からジャニーズなどが好きだったから、もっくんも目当てのうちかもしれない(笑)さらに「よく聴こえないから前の席を」との希望だそうで、そういう考え方もあるのか〜と面白く思った。



閑話休題
この時期に観てよかった。最近、夏が終わるのを寂しく感じていたけど、この映画を観て、冬が来るのが待ち遠しくなったから。日本の北の地方都市の、寒い様子が魅力的に撮られている。自宅でくつろぐもっくんと広末涼子の、白いセーターの微妙なペアルック加減が可愛らしかった。ああいうセーターがサマになる男性というのは少ない。
会社の入っているビルや、思わず冬ごもりしたくなる、二人が暮らす古いスナック付きの一軒家など建物もよかった。


「高給保証、旅(立ち)のお手伝い」
職を失ったチェロ奏者の大悟(本木雅弘)は、妻の美香(広末涼子)と共に故郷の山形へ。広告でみつけた「NKエージェント」は、佐々木社長(山崎努)による納棺専門社であった。
しんみりした映画かと思っていたら、程よく笑いあり涙ありで面白かった。山崎努と「死」で「お葬式」、もっくんの○○○姿に「シコふんじゃった」を思い出す(あの「業務用ビデオ」がDVD特典に付くなら買ってもいい・笑)。二人とも役にはまっていた。
「NKエージェント」の事務員を演じる余貴美子もよかった。会社のソファに足を崩して座っている姿がいかにも自然で、こういう所作が出来る女優さんっていいと思う。今のハリウッドで言うならヴァージニア・マドセンみたいなかんじ?


私は広末涼子の演技が苦手なので、時折観ていて辛い場面もあった(ごはんを食べて肩をすくめる仕草など)。もっとも、納棺師の仕事を「穢れている」と拒否する女性には、ああいう記号っぽい軽い演技が合ってたかもしれない。その他、これは彼女の問題じゃないんだけど、例えば郵便バイクが停まったのになぜそっち見ないんだろう?とか、こまかいところが気になる。
主人公の妻は恩着せがましいやつだ。「これまで笑って付いてきたじゃない、だから今回は私の言うこと聞いて(納棺師という仕事を辞めて)」だなんて、私なら、今頃そんなこと言われても知らん、と言いたい。それならそれでわがままで押しがあれば面白いんだけど、作中ではもっくんの人生が強調されるあまり、彼女にはバックグラウンドとなる人生が無いかのようなかんじを受けた。知人も勘もない土地に来て、夫の仕事のこともよく分からない、そういう不安も感じられない、かといって不安を感じていないふうにも見えない。一人だけ人間でないようだった。
それから、パンフレットにも使われている、鳥海山をバックにもっくんがチェロを弾く場面。私はどうしても意味を考えてしまうので、あのシーンはよく分からず混乱した。イメージショットが機能するような映画じゃないと思うし…


食事シーンも多かったけど、あまりそそられるものはなし。ただ、単純に「メニュー」として、バゲットに刺身、というのは試してみたいと思った。ちなみにこのシーンでは、それほど忙しくなさそうなのに、自分で料理しないのかな?と思った(勿論そういう人もいるだろうけど、もっくんは家事を疎かにするタイプに見えない)。


「1800万円」のチェロを手放した主人公の、「解放されて楽になった」というようなモノローグが印象的だった。