百万円と苦虫女


21歳の鈴子(蒼井優)が、「100万円が貯まったら引っ越す」ことに決め、日本各地を転々としながらアルバイト生活を送る物語。



観ている最中…また観終わってすぐの感想は、「若い(若い二人)っていいなあ」ということ。私にはもうああいう恋はできないだろうなあ、いやべつに、できるかも、などと思った(笑)スーパーで偶然出会うシーンが最高にいい。
森山未來の普通の大学生ぶりが好ましく、意外とがっしりした腕(鍛えてるというより、若い男の子の、男の子だからゆえの腕)にどきどきした。
蒼井優は、作中言われるように「細いけど丈夫そう(よく働きそう)」。何をしても器用なのが可笑しい。


ラスト近く、「新しい女の子」が「彼」に「いいんですか〜、誤解されたままで…」と言うなどのありがちすぎるシーンにはがっかりしたけど、はっとさせられるシーンも多々あった。晴れた日の、学校の保健室の静かさや冷たさ。「帰宅してドアを閉めた後、カギを掛ける」という(当たり前の)動作がちゃんと入ってるのも嬉しい。
一つ一つのエピソードが程よくきれいごとで片付けられていくけど、ああいうの…例えば農村での一幕など、色々考えると怖くていられないから、あれくらいの味付けでよかったと思う。


物語の前半、鈴子が「前科者」になる原因は、雨の日に拾った子猫を捨てられてしまい、そのお返しに相手の所持品を全て処分してしまったから。この時点では、その行動が彼女にそぐわないように感じられたけど、話が進むにつれ、彼女は、自分に災難が降りかかっても戸惑うばかりだが、愛するものが傷つけられれば激昂するタイプなんだなと思った。またそういう自分に薄々勘付いているからこそ、「別れが辛くて距離を取ってしまう」んだなと。
それで、昔のことをふと思い出した。私(74年うまれ)が子どもの頃は文通が流行っており、転任する先生や転校する同級生と手紙のやりとりをしたり、雑誌で見知らぬ相手を探したりものだけど、私はいつも、始めこそ熱心に書くものの、どうしていいか分からなくなって、自分の側でいつもストップさせてしまっていた。先のこと、余計なことを考えずにやっていきたい。そういう気持ちってよく分かる。