ゼア・ウィル・ビー・ブラッド


ポール・トーマス・アンダーソンは好きな監督。メロウなかんじがいい。この作品もすごく面白かったけど、やっぱりもっと人がいっぱいで色とりどりのほうがいいな〜「ブギーナイツ」だよな〜と思った。



20世紀初頭のカリフォルニアを舞台に、「石油屋」ダニエル・プレインビュー(ダニエル・デイ・ルイス)の仕事人生が描かれる。
冒頭、カゴに入れられたまだ幼い彼の「息子」の姿に、故ナンシー関を思い出してしまった(実家がガラス屋で商売が忙しいため、段ボールに入れてテレビの前に放っておかれていたそう)。箱入り?で放っておいても、子どもは育つ。この男の子の演技がうまくて感心した。他にはダニエルの「弟」がよかった。


ダニエル・デイ・ルイスの、脚や手の指の長さ、きれいに剃られたもみあげが目についた。生活描写が全くないため(それがいいんだけど)、あの仕立ての良さそうなジャケットはどこで買ってるんだろう?どろどろに汚れた服はどうやって洗濯してるんだろう?などと色々気になってしまった。火事を消すくだりなど、石油掘りの描写も面白かった。
また、ダニエルが息子とスキンシップを取るシーンは、何故かエロティックに感じられてどきどきした。この映画にセックスを直接描いたシーンはないけど、ダニエルが彼にウイスキー入りの牛乳を飲ませたり、弟に銃を突きつけたりするシーンは、性器を露出しているかのようだった。


印象的だったのは、ダニエルが、久々に学校から戻った息子を地元のレストランに連れて行くシーン。「ステーキでも食べて精をつけろ」なんて、どんな人間でもパパはパパだ。さらに、これまで仕事にまつわる姿しか見せなかった彼が公の場にいるのに違和感を覚え、つきあい始めて日の浅い相手の新たな一面を見るような、へんな気分になった。


全体的にどうにもコメディぽい。そもそも冒頭から、深刻な音楽が画面に恐ろしいほどフィットしており、何のつもりなんだ〜?と笑ってしまう。
ダニエルとポール・ダノ演じる牧師のイーライがらみのシーンがとくに可笑しくて、イーライがヤられて泥まみれのまま食卓についてるところや、ラストのお屋敷での格闘など、コントのようだった。イーライが協会で行う「ショー」の場面も印象的で、信徒たちの姿は、噛まれると拡がってゆくゾンビの群れみたいだった。