ファーストフード・ネイション


アメリカのファーストフード業界について、大手企業の幹部社員、店舗のアルバイト学生、精肉工場で働く不法移民の姿を通して描いた作品。
ハンバーガーチェーン・ミッキーズの主力商品「ビッグワン」のパテから糞便性大腸菌が検出され、マーケティング部のドン(グレッグ・キニア)はコロラド州の精肉工場へ視察に向かう。そこではメキシコからの不法入国者たちが低賃金で働いていた。いっぽう工場ちかくの店舗で働く女子高生アンバーは、周囲の人々の影響で環境問題に目覚め、アルバイトを辞める。



冒頭、「ビッグワン」ののっぺりしたパテへのズームから舞台はメキシコへ。アメリカへの入国を決意した人々の姿にかぶさるギターの少々のんびりした調べに、「サンキュー・フォー・スモーキング」などを連想し、真面目にかつユーモアを持って押しまくってくる映画かと思いきや、そうではなかった。センセーショナルな宣伝とも異なっていた。大きな動きはなく、ただ実態が淡々と描かれる。


映画のラストに流れる牛の屠殺と解体のシーンには、とくに心を動かされなかった。宗教や文化による受け止め方の違いがあるんだろうか。もし自分が彼女の立場なら、何らかの理由で動揺するかもしれないけれど、人間が食べ物を作るために動物を飼育し、殺すことには疑問がない。そして、格差社会や、想定外の事件(この場合は牛のフンの混入)が、頻度は違えど「発生」しても、反対する流れを含め、それはそういうサイクルなのだと思う。物事はなるようになる。
学生の手で柵を切られても逃げようとしない牛たちは、「殺されて食べられる」というよりも「自分たちを食べさせている」かのように感じた。


ドンが出張先でも自社のハンバーガーをせっせと食べる姿が、いかにもアメリカ人らしいと思った。「クビになるかも」と言いつつ、話の最後では変わらずプレゼン会議に出席しているあたり、自分を律し真面目に仕事をするタイプっぽい。
アンバーと、パトリシア・アークエット演じるその母親の家庭におけるレトルトの食事は超・超まずそうだった。娘のほうは、ああして目覚めた結果、食生活も変化したのだろうか?何を食べるようになったか知りたかった。ちなみにこの家庭は下流社会の典型として描かれているけど、パトリシアのおかげでどうも、能天気というより楽しく魅力的に見えてしまう(しかもはじめ親子でなく姉妹かと思った・笑)


三者の交差を示唆するシーン(交差点でドンの車と移民を乗せた車とが隣り合わせになるなど)はあざとく無意味に感じられ、好みでなかった。


ブルース・ウィリスハンバーガーの食べ方は良かった。「糞が入っていようが、焼いてしまえば同じ」などの彼の言葉がアメリカだと感じた。あのハンバーガー店は個人経営なのか、エコ寄りのチェーン店なのか、どういうんだろう?