エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜


新宿武蔵野館にて。最近はちょっと遠めの映画館に行くことも多いけど、この映画は、なんとなく新宿で観たかった。



いきなり関係ないんだけど、冒頭に流れるパリの下町の情景に、漫画「風と木の詩」の終盤を思い出してしまった。
ちなみに風木を読むと、私はニール・ジョーダンの「クライング・ゲーム」に出てくるカエルとサソリの話*1を思い出す。好き合っていても、自分や相手の性分で、あるいは環境の問題で、上手くいかないことがある。ドラマチックなストーリーでなくとも、自分にも何度か経験がある。


閑話休題。人の顔を覚えるのが苦手な私は、ピアフ以外の登場人物の見分けがつかず困ってしまい、同行者に「誰?」「誰?」と聞きながら観ており、しまいには誰か出てくるたびに「ダンナだよ」などと教えられていた。
そんな中でも心に残ったのは、ピアフの祖母役のカトリーヌ・アレグレ。シモーヌ・シニョレにそっくり…と思ってたけど、今調べたら、娘なんだ〜!あのいかにもフランス女というかんじの顔、見惚れてしまう。
ピアフ役のマリオン・コティヤールについては、足首の無い棒のような脚(錯覚なのか、ボディメイクなのか?)が印象的で、「クイーン」のへレン・ミレンの脚(あれは地だけど)を思い出してしまった。ピアフについては歌以外知識がないから、本人はどうだったか分からないけど、ああいう子どもっぽい歩き方をしていると、ああいう脚になるのかな?と思った。


舞台で倒れながら何度も登場し直すピアフと、盛大な拍手で迎える観客の姿には、芸人の運命の残酷さを感じてしまった。穴を埋めるように表現し続ける者と、奪う者。でもそうしなければならないのなら、仕方ない。
それにしても、子どもの頃から周囲への接し方が全く変わっていない彼女に対し、周りの人たちはなぜあんなに献身的なんだろう?(実際、無名時代からの友人モモーヌが反抗するシーンもある)。同行者は「フランスの宝を守るという意識があったのかも」と言っていた。


ピアフとボクサーのマルセルは、恋におちる。彼が用意した出会いの席での、サンドウィッチの中身がすごかった(笑)しかしピアフは、女性が歌うシャンソンの詞のように…演歌の詞のように相手には合わせず…自分の土俵に彼を招く。
とあるシーンの、彼をみつめるピアフの顔のアップで、彼女の小鼻がふくらんでいたのが面白かった。私もああいう顔をすることがあるんだろうか?
彼の優勝を祝う「100万本のバラ」の後、ベッドの中での彼女の笑い声が、歌のつづきのようだったのも、印象に残った。

*1:カエルが泳げないサソリを背中に乗せて川を運ぶ。刺さないよう念を押すと、自分だって溺れてしまうのにそんなことはしないと言うが、結局サソリはカエルを刺し、どちらも沈んでしまう