私だけのハッピー・エンディング



男とセックスしながら「朝まで一緒のベッド」「アイラブユー」は犬にしか与えない主人公、そのうち癌が発覚というんで、今年観た色んな映画を組み合わせたみたいだな〜と思う。お洒落すぎる部屋やハイテンションなジョークに始めはぴんとこなかったけど、途中から気持ちが沿い楽しかった。邦題はありがちな言葉の組み合わせじゃなく、ほんとにそういう話。
原題「A little bit of heaven」もいい。作中これに近い言葉がいいタイミングで出てくる。主人公がどん底の時、それはやってくる。ふと気分が変わる。この場面に限らず、彼女の気持ちの移り変わりが素直に描かれているのに好感を持った。


予告編の時点では、主役のケイト・ハドソンのむくみように「キャシー・ベイツの娘」の役作りにしてもすごいなあと思ってたけど、実際に観てみたら、確かにぶたれたヒラメみたいな顔だったけど、ババくさキュートというのか、なかなか良かった。作中一度だけ「きれいだよ」と言われる場面、恋人からじゃない、ああいうのがいいんだよなあ。
冒頭、自転車に長いスカートがまくれてのあんよもキレイ(ゴールディ&ケイトの母娘の脚は「あんよ」って感じ)。「神様」の隣でのラフな座り方もチャーミング。彼女の「臨死体験」やその他、感じたことが(「天国から来たチャンピオン」的というのか)素朴な映像で表されるのがいい。


ケイトと愛し合うジュリアン…「ヨーヨーが趣味の、ジョークが下手な本の虫」を演じるのは、ガエル・ガルシア・ベルナル。初めてのデートの夜、ドアでの別れ際の笑顔が最高にキュートで、よくこの人と夜を離れて過ごせるなと思う。最後にケイトの問いに、率直な答えと少し上手くなったジョークで返すのがいい。
彼とケイトは「医者と患者」の間柄だが、それは「知り合う切っ掛け」であり、ケイトが恋に落ちるのはひとえにジュリアン(=ガエル)の「魅力」ゆえ。中盤彼女が「治療をやめ自分らしく生きる」と決断することもあり、少なくとも作中では、「関係」を持ってからの二人は「医者と患者」としては向き合わない。真摯な作りだなと思った。


母親役のキャシー・ベイツは「12年前からベジタリアン」の娘に向かって「ステーキで栄養つけなきゃ」「マクロビをやってみる?」などと言いながら、当のステーキを焦がしちゃうようなタイプ。「お洒落してキレイでいてほしいの」って、私なら言われて一番むかつく言葉の一つだ(笑)
しかし彼女がベッドで「昔よく歌ってくれた歌」を口ずさむ場面では、例えば母の声や手に触れながら死ぬのは、「親不孝」ではあっても、悪くないんじゃないかと思わせられた。ケイトは、友人には「I'm sorry」と言うが、母に対しては「ずっとよくない娘だった」と告げるのみで、死ぬことを謝りはしない。対してキャシーが「どこの娘もそうよ」と返すのに、涙がこぼれてしまった。


宣伝には「余命半年で出会った運命の恋」というキャッチコピーが使われてるけど、彼女は周りの全ての人との関係を自分で手掛け直して死んでゆく。出来すぎとはいえ、「ハッピーエンディング」なラストシーンがよかった。