ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー


「リフトの客評価が低い」モリー(ビーニー・フェルドスタイン)は、エイミー(ケイトリン・ディーヴァー)以外の運転する車に乗るのが苦手である。「私達には多面性がある、皆に私の色んな魅力を知ってほしい」と願いつつ自分は周囲を見ようとせず、世界を恐れて殻の中に閉じこもっている。そんな彼女が一夜にして、色んな人の車に乗ってひとりよがりから脱却し、最後にはエイミーから車を譲り受け自分でハンドルを握るようになる。

この映画は私には、このあまりにも筋の通った一本の柱以外が陰に隠れすぎてしまっているように感じられた。加えてクレジットで製作総指揮にウィル・フェレルが入っていると知ったせいかもしれないけれど、オープニングの瞑想シーンなど今っぽく見えるようでいてウィル・フェレルの出てくる映画みたいだと思った。「実は皆もいい大学に…」というのもそう、ああいう考え無しな要素を話の曲がり角にするのはウィル・フェレルのセンスに通じるなと思った(彼の場合そういうところにエネルギーがあるのであって、悪いと言いたいわけではない)。

モリーとエイミーが互いを褒め合えるのは互いを知っているから。あんな素晴らしい関係を築いているのに、その外には、少なくともモリーは目を向けていない、知ろうとしていない。最後に彼女が友の背を見る場面にああこれはこういう映画なんだと思った。関係は閉じていちゃダメなんだっていう。その後のいわば外し、落としは、私にはセンスがいいというよりも逃げているように感じられた。その他の、例えば殺人鬼のくだりなども。