ナディアの誓い


UNHCR WILL2LIVE映画祭2019にて観賞。2018年/アレクサンドリア・ボンバッハ監督/アメリカ制作。ISISに家族や同胞を殺され性奴隷となったナディア・ムラドの日々を追ったドキュメンタリー。

映画は移動中のナディアと共に自撮りしようとする男性の群れに始まる。以降、彼女が公の場で話す場面になると別の語りが被ったり別の場面に変わったりという演出が多く少々驚かされたが、これは勿論「クライマックス」に向けて見る者をじらしているわけではなく(そんなものはないのだ)、このドキュメンタリーは世界を動かすために難民が声をあげる時、そこについて回るもの、言うなれば恥ずかしげもなくついて回るものを捉えているのである。自分もその「ついて回る」ものの一部であることが暴かれ居心地が悪くなる。そう感じさせるための映画なのだと思う。

ナディアは国連総会に向けた「リハーサルというよりオーディション」を前に、コーディネーター的なスタッフと共にスピーチの時間を調整したり美容院に行って身なりを整えたりする。その前に彼女の「美容師になりたかった、女の子皆に自分は特別だと思ってほしかったから」との語りが挿入されているのを踏まえると、ここで「女優かモデルみたい」と言われる彼女は全然嬉しくないだろうと推測される。カナダの庶民院を案内され議長席?に座った写真を撮られるのには、私ならあのような写真は、いつか見るかもと取っておく、家族に送る、SNSにあげる、例えばそんな用途を持つものだけど、彼女にとってはどうだろうと考えた。そんなもの、何の意味があろうか。

本作の表面、いわば一番上のステージに置かれているのがこの映画のための彼女の語りである。勿論これだって収録の際の裏側に思いを馳せはするが(そのように作られているが)、そこで彼女は言う、私は活動家ではなく難民だ、皆は本当に聞いてほしいことを聞いてはくれない、どうやってレイプされたかばかり聞く、私が聞いてほしいのはどうしたら人権が守られるか、どうしたら女性が被害に遭わずにすむか、そういうことだ、自分のことを誇りに思えない、ジェノサイドに対し正義が下されて初めて自分を誇れると思う。原題「On Her Shoulders」。