僕たちのラストステージ


作中のローレル&ハーディがショーを締めくくる「楽しんでいただけましたか、僕たちは楽しかったです」とはとても良いセリフだが(授業の終わりにも言いたくなるような…と考えると、あれは実に、頑張って準備した時でないと出てこない言葉だ)、これは二人が「ラストステージ」においてその気持ちを真に確認するまでの物語である。スティーヴ・クーガンジョン・C・ライリーの互いへの愛を控えめに表す演技が素晴らしい。

スタン(スティーヴ・クーガン)が楽屋で靴底を削る音に始まった映画は、彼とオリー(ジョン・C・ライリー)の正反対コンビの長回しの出勤風景を経て、プロデューサーのハル(ダニー・ヒューストン)いわく「お笑い西部劇」の撮影現場がカメラに吸い込まれ満席の劇場のスクリーンに変わる。今の私の目で見ると彼らのダンスに皆が「爆笑」しているのがぴんとこないが、「二人」であることが最大の強み、良さなのだと伝わってくる。ハーディのあの決め顔だってローレルあってなのだと。

スタンいわく「映画の中の僕らは有名人じゃない、そういう設定だ、頼れるのは互いだけ、それがいい」。幾度も挿入される観客の笑顔に、こんなにも人々を笑わせている二人が(ここでは当初の空席や新しい映画が撮れないなどの)辛酸を嘗めているのが奇妙に思われるが、見ているうち、あの笑顔こそステージの向こうとこちらに厳然たる違いがあるということを伝えているのだと分かってくる。だから「ローレル&『クック』」を笑顔で待ち望む人々の期待に応えなくたっていいのだ。

マネージャーのデルフォントがご丁寧にも「奥方たちのショーも最高でしょう」と口添えするが、確かにそれぞれの妻、ルシル(シャーリー・ヘンダーソン)とイーダ(ニナ・アリアンダ)も四人揃ってのディナーの場面からして「コンビ」として撮られている(見せる意思のないものであるが)。「妻同士」なんて所詮男の付き合いに左右される存在だよねと思ってしまうのが、オリーの「おれたちはハルが決めたコンビだ」というセリフによって、彼らも彼女らも「たまたま」の組み合わせであることに変わりないと考えられるところが面白かった(そういう意図のセリフではないが)。