ジーサンズ はじめての強盗



校門の前で街灯にもたれるケイン様を孫のジョーイ・キング視点で捉えたカットの素晴らしさたるや。まずは全篇、ケイン様のお召し替え映画として楽しめる。ヤンキースのキャップやTシャツの似合わなさもよかった。


ジョー(マイケル・ケイン)、ウィリー(モーガン・フリーマン)、アルバートアラン・アーキン)の三人が「似ているわけではない」ことがそれぞれの帽子で、ウィリーの家の居間で陣取るそれぞれの椅子で(お客用のソファはすっかりジョーの専用に)「準家族である」ことが分かる。向かいの自宅まで30歩もない道のりを辿るケイン様のお姿に、年を取ると物理的な距離は遠くなるものだと思う。


孫娘「ブルックリン」役のジョーイ・キング(「Wish I Was Here」でザック・ブラフ監督の娘役だった繋がりで出てるのかな?)は、「ラモーナのおきて」(これも家を出なきゃならなくなる危機の話である)で彼女のお姉ちゃん役だったセレーナ・ゴメスのようだった。顔が似てたんだな。強盗実行を決意したジョーがかつての、今は離婚した娘婿に「孫のことをよろしく、始めはフェイクの父親でいいから」と言うのはみうらじゅん親孝行プレイの話と一緒だよね。なかなか有効なやり方だと私も思う。


犯行当日に地元のお祭りに出てアリバイを作るというの、クリスティの小説によくあったよなあと思い出しながら見た。ほんのちょっとした!帽子の使い方や、「ドアのある所にわざわざ後ろから入るやつはいない」なんてトリック?がミステリーじみており楽しい。全篇通じてお話がうまく出来ていて、取り調べの時に「その時」を見せてくれるやり方も小気味いい。ちなみに「こねこちゃんポーズ(Pussy cats!)」や懐に一杯詰め込んで逃げる姿など、犯罪絡みの時の格好が何となく「女」を連想させるのが面白かった。


グラス一杯のシャンパン、毎日のパイ、それすら得られないなら「犯罪」したっていいじゃないか。製鉄所側の「年金は払わず操業もやめる」との通知を聞く場面で、まだ現役であろう男達が何度か映るのが印象的だった。三人の行動は彼ら自身(と、せいぜい半径何メートルかの人々)しか救えない。スーパーマーケットの店長(ケナン・トンプソン)の「少なくともうちの店ではやめてくれ」から「婆ちゃんが捕まったから保釈金が必要」までのセリフには、誰だって自分のためにもっと勝手にやればいいんだというメッセージを感じた。


イベントの「カラオケ」でアラン・アーキンアン・マーグレット!が歌う「Hallelujah I Love Her So」。