ハロルドが笑う その日まで


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公開初日、ららぽーと船橋内のTOHOシネマズにて観賞。後で向かいのイケアに買い物に行ったら、ショールームのいつもの鉛筆を目にするのも楽しかった(笑)


「全てを失った」主人公ハロルド(ビョルン・スンクェスト)は、クリスマスイブの晩にイケアの創業者イングヴァル・カンプラード(ビヨルン・グラナート)を拾う。まずはカンプラードが(役者が演じているとはいえ)実名で登場して、それっぽい言動をするのが楽しい。車に乗り込むや開口一番「サーブか、倒産して当然だ」。ハロルドは「お前は本物か?」と聞くが、「従業員の士気を高めに粥を配りに行くんだ、そうすれば誰かが映像を撮ってYouTubeにあげるから、宣伝になる」など、その言動こそが「本物」の証明になる(と、私達には思える・笑)「退場」時には愛する店内で一人、節電のため照明を落とした中で眠りに着く。


遡ってハロルドと16歳のエヴァ(ファンニ・ケッテル)が出会って早々にカフェでスープを飲んでいると、窓の外に昨夜「ママを置き去りにした」男が見え、エヴァは飛び出し食ってかかり、追って来たハロルドについて「ママと私のボディガードだ」と嘘をつく。この場面でふと、人は自分の断面と合う誰かの断面を探しているのかもしれない、などと思う。でもそうそう「うまく」はいかない。二人が分かれる直前の「窓の外のダンス」にじんとしたのは、「ママ」がいつも剥き出しにしているその欲求を、ハロルドがちょっと違う風に燃やす手助けをしたように感じられたからかもしれない。


ハロルド役のビョルン・スンクェストは特に前半などほぼ「一人芝居」だが、まさに手練れの演技を見せる。初めて手にした振りして、銃だって(「映画」の中じゃ)持ち慣れてるんじゃない?なんて思ってしまうくらい(作中一度だけ銃を撃ってしまう場面が可笑しい、イケアのいい宣伝・笑)エヴァ役のファンニ・ケッテルも彼に向ける表情が実によく、始めなど、なぜこんな素敵な笑顔ができるのかと胸がいっぱいになった。ちなみに自分の孫の男の子の方の名前を覚えていないハロルドが、助手席でエヴァと名乗った相手に「男か女か?」と聞くのが少し面白い(彼女はフードをとって髪を見せる)


私にはこれは、迷っている時には迷っていると気付かないものなのかもしれない、というお話にも思われた。見ている時の自分もまさにそう、最後までどういう話だか掴めなかった(笑)ハロルドと、心は沿わずとも一緒になって彷徨っていたとも言える。