人生スイッチ



「アルモドバルが製作を務めたアルゼンチン映画」としか知らずに出掛けたら、オムニバスだった。アヴァンタイトルでまず一本。作中の「モデル」が広げる冊子の中身やオープニングクレジットの背景が「野生動物」の写真なのを不思議に思っていたら、原題の「Relatos salvajes」は英語で「Wild tales」という意味らしい。


全話ダミアン・ジフロン監督によるオムニバスということで、映像の「感じ」は似ておれど、アルゼンチンの色々な場所が見られるのがまず楽しい。第一話の飛行機からのちょっとした眺めに始まり、ダイナーの様子(夜が明けてのラストシーンに、こんな所だったのか!と思う/「ポテトと目玉焼き」って単純だけど思いつかなかった、今度作って食べてみたい・笑)田舎のハイウェイとちょろちょろ流れる濁った川に小さな橋、どこか荒涼としている金持ちの家、そして結婚式。


どれも面白く、特に「エンスト」(原題「El más fuerte(最強)」)なんてよく出来てたけど、リカルド・ダリン主演の「ヒーローになるために」(原題「Bombita(爆弾男)」)が白眉。次々と帰って来るレッカー車、どこに置いても幅が足りず落ちそうなバースデーケーキ、何より何度も挿入される街の風景がいい。終盤、カフェで朝食をとる彼の顔が最高!ラストシーンには第二話のおばさんの「私は(刑務所に入ったことを)後悔してない」を思い起こした。そして次の話では、「刑務所に入る」ことにつき嫌なやりとりが延々続くのだった(笑)