ダークナイト ライジング



バットマン ビギンズ」「ダークナイト」に続く、クリストファー・ノーランの「バットマン」シリーズ完結編。長い!もさい!クリスチャンが何かというと笑わかそうとしてくる。オールスター揃って騒ぎながら「終わった」感じは悪くない。


(以降、大きなネタバレはしてないけど、小さなネタバレはしてます)


ダークナイト」のジョーカー(ヒース・レジャー)は「わけがわからないという設定」のキャラクターだから、何をしても「そのまま」受け入れることができたけど、本作の敵であるベイン(トム・ハーディ)は「筋書き」を持っているので、なぜこういうことをするんだろう?と考えてしまい、いまいち入り込めず。また私が重量級好きってのもあるけど、ジョーカーには全く性を感じないのに対し、ベインは「男」にしか見えず、困ってしまった。
私が「ダークナイト」に乗れなかった理由の一つは、ジョーカーが仕掛ける、いわゆる「囚人のジレンマ」に対し、そのまんまじゃんと子どもっぽく感じてしまったこと。本作のベインも違うタイプの「悪」ながら、似たような罠を持ち出す。いや、前作同様「そのまんま」感があったのは、こうした「悪」の言動よりも、例えば「希望」を見ながら朽ちていくという「地獄」の存在かな。ということは、「そのまんま」は「悪」の種類によるんじゃなく、単に作り手側のセンスによるというわけだ(笑)


私にとってノーランのバットマンシリーズの一番の見所は、ブルース坊ちゃま(クリスチャン・ベール)と爺さん二人(アルフレッド=マイケル・ケイン、ルーシャス=モーガン・フリーマン)とのやりとり。今回も楽しく観た。最後だっていうのに、三人揃う場面がないのは残念!
本作では髭に白髪さえ混じってるクリスチャンだけど、年寄り衆と一緒の時は見事な「坊ちゃん」ぶり。三人とも同じくらいの身長のはずだけど、なぜか本シリーズでは、クリスチャンが小さく見える。今回唯一の上目遣いの相手はモーガン・フリーマンだ。
シリーズにおいて初めて、ブルースより「明らかに年下」の男も出てくる。ジョゼフ・ゴードン=レヴィット演じる「熱い」刑事だ。ウェイン邸を初めて訪れ一席ぶった後に部屋をのしのし出て行く姿、空っぽのウェイン邸の前で立ち尽くす姿、そしてラストシーン。持って生まれた後姿に、こちらが勝手に色々想像してしまう。


「男」の映画だから、出てくる「女」は「普通」じゃない「特別」な者のみ。キャットウーマンのセリーナにアン・ハサウェイ、実業家のミランダにマリオン・コティヤールアン・ハサウェイ(のキャラクター)を見て、「女」のアクションというのは、可動域というか体の柔らかさがキーなのかなと思った。バットポットに前から!またがったり降りたり、しゃがんだり、という動作が目に付く。
冒頭セリーナと初めて顔を合わせるブルースの、いたずらっぽい、何か心を含んだ目つきが印象的だった。「ひきこもり」ではあっても死んじゃいない。終盤「再会」する時も同じ目だ。ブルースは女二人に同じこと…「どこかへ行きましょう」と言われ、それぞれ異なる返事をするけど、この「目」から「結末」が想像できた。
ちなみにミランダが「写真」の前でキスをするのは、ここで出来るなら続きもオッケーってことだよね。こういう女はお坊ちゃんにはダメかも(笑)


私がノーラン作品を「もさい」と感じてしまうのは、主に会話において。本作なら慈善パーティでのブルースとセリーナのやりとり、中盤のブルースとアルフレッドのやりとりなど、言葉が多すぎて、もっとすっきりできないものかと思う。後者なんて、あんなに妙な盛り上げ方されちゃ、ラストの予想も着いちゃうし(笑)それから、セリーナの狙う「クリーン・スレート」の機能について、ギャグかと思うほどしつこくセリフで説明するくらいなら、「デント法」って何なのか教えてほしかった。
アクションはいつになく肉弾戦が多い。重量級好きとしてはバットマンとベインの一騎打ちは嬉しかったけど、どうもどたばたした感じ。クライマックスの「戦争」には、これじゃ昔のカンフー映画じゃん(門下生同士が喧嘩するようなやつ)と可笑しくなってしまった。ベインの手下はなぜあんなにも、何度も強調されるように「忠実」なんだろうと思ったけど、警察が「士気」を失わないのと同じなのかもしれない。


追記:
日曜の夜、BBCのドラマ「SHERLOCK」の「バスカヴィル家の犬」を観ていたら、ジョン(マーティン・フリーマン)が懐中電灯を「軍人持ち」していた。かっこいいけど、「ライジング」でゴードン本部長(ゲイリー・オールドマン)の懐中電灯+銃、を見ちゃったからなあ!と思う(笑)
また、「ライジング」にはキリアンも出てたのに、以前は強調されてたあの瞳がよく見えなかったから、替わりってわけじゃないけど、シャーロック(ベネディクト・カンバーバッチ)の素晴らしい瞳が堪能できてよかった。