エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン



シネスイッチ銀座にて公開初日に観賞。午後二時の回はほぼ満席だった。今年7月に閉店したスペインのレストラン「エル・ブリ」についてのドキュメンタリー。


食べたいと思うものは出てこず、レストランの紹介もされないけど、面白かった。レストランのドキュメンタリーでありながら、色んな世界の「裏」…そう、描かれるのは見事なまでに「裏」ばかり…に通じるところがあるように思った。


映画は三部で構成されている。まずは「休業=実験期間」。荷物と共にスタッフがバルセロナの実験場に移動、横一列に整然と並べられた器械の画の上に「料理の開発のため毎年6ヶ月休業する」旨のテロップ。
実験結果は全てデータベース化される。「記録」のために撮られる写真のどれも不味そうなこと、それでいいのだ。買出しの際に市場のカウンターに座る場面と、皆でまかない(ムニエルとパスタ?)を食べる場面が唯一「庶民的」で美味しそうなんだけど、前者は食する様子を映さず、後者も一瞬で終わってしまう。
このパートは、料理長にスタッフが怒鳴られる長丁場で終わる。理由は部下によるデータの破損を黙っていたため。「プリントアウトしたのが残ってるし!僕のせいなんですか!」とまさに「食い下がる」も、「紙ばかりでどうする!」と責められる。「料理」のドキュメンタリーらしからぬ内容に、これがこのレストランの真髄かと思わされた。


次は「レストランに移動してから開業まで」。引越し当日の場面で「実験場」の外観が初めてちらりと映り、街中のこんなところであれこれしてたのかと感慨深く思う。現地で初顔合わせするスタッフが皆「普通」っぽいのは意外に感じたけど、研究とその結果の「データベース」さえあれば、現場では皆が「普通」に働くことができればそれでいいのかもしれない。
そして「開業以降」。華やかな「表舞台」=テーブルなどは一切写らず、客の姿も主に厨房に訪ねて来る所やレストランの外からの様子が捉えられるのみ。厨房と食堂はシームレスな感じで、境目で料理長が全てを「試食」しメモを取る。この段階でもまだ、メニューの全貌は明らかにされない。
映画の最後をついに飾るのが、華麗なメニュー写真の数々。それにしてもあのカメラマンは普段は何を撮っているのか、どういうわけで選ばれたのか気になった。


冒頭から「日本の素材(をアメリカ人が調理したもの)」が登場、その後も有名な柚子を始めとして松茸、柿、梅干、しゃぶしゃぶなど日本語と共に取り入れられていた。それらはちょっと、食べてみたい。