WAYA! 宇宙一のおせっかい大作戦



祝日前の夜、シネマート新宿にて。ここ数年の日本映画で一番のお気に入り「築城せよ!」(感想)の古波津陽監督の新作というので。あまりのタルさにびっくりしたけど、監督のこと嫌いになれないのだった。次作も楽しみ。


出身者としては、舞台がまた愛知県というのは嬉しい。特に「ご当地」をアピールしないのがスマートだけど、スーパーの場面で当たり前のように映る「女子高生の白襟」にウケてしまった(笑・私もアレだった)
しかしセリフが名古屋弁じゃないのはやはり不自然に感じた。アメリカ人が観る映画ならフランス人も英語喋っていいわけだし、あるいは例え東京でも皆が「標準語」喋ってるわけじゃないから、あらゆる映画は、記号としての言葉を使ってると考えてもおかしくない。それならば地方だって「標準語」でいい。ただ「築城せよ!」と違い、本作は実在する名駅前の円頓寺商店街!が舞台だから、期待しちゃってた。そもそもタイトルにある「わや」(名古屋弁で「めちゃくちゃになっちゃう」こと)の方こそ、あまり使われてないし。


タイトル通り、「とにかく何かしたいんです!」とセリフで何度も言い切ってるくらいウザイ話だ。おせっかいといっても、例えばマイク・リーの「ハッピー・ゴー・ラッキー」(感想)のようなスタンスではなく、世界ががっちり固定されてる感じ。
商店街の面々が、下駄屋に婿入り30周年のシゲさん(矢崎滋)のために、かつての演劇仲間・ノブさん(ルー大柴)との共演を企画するが、実はシゲさんは彼のことを未だに許していなかった…なんて、イギリス映画の画づらが目に浮かぶ(どちらかの役でビル・ナイが出演。「ラッキー・ブレイク」の印象か・笑)。あるいは最近なら村の演劇ってことで「大鹿村騒動記」も思い出す。いずれにせよ、つまらなくなるはずがない話なのに、特に前半はタルい。あまりに想定の範囲を出ないストーリーが、あまりに「現実」離れした登場人物たちの言動により、あまりに丁寧に描かれすぎるという感じ。「築城せよ!」は現代に戦国武将がやってくる話だから、そういうのが目立たなかったのかもしれない。普段なら有難味のない藤田朋子のような役者の演技が、本作を観る時は大きな拠り所になった。


「築城せよ!」の「ダンボール城」に相当するのが、空地に建てる芝居小屋。同居人は「あれが見られただけでいい」と言っていた(笑)
「飛行機の設計」屋が図面を引き、大工を中心に街の皆が働く。演出担当者が車椅子を使用していることもあり、作りはバリアフリーだ。子どもたちが遊び回る一方でお茶が配られる、作業のひとときの描写が楽しい。最後に「控え室」もちゃんと見せてくれる。いびつな板の隙間から差し込む陽の光が温かく、印象的だった。