ジュリエットからの手紙


「男と女!」「恋愛って素晴らしい!」というベタベタのオープニングには乗れなかったけど、次第に楽しくなってきた。恋におちる二人のチャーミングさ、片方の恋の真摯な終え方、いったん落胆させておきながらロマンチックなラスト、たまにはやっぱりこんなラブコメが観たい。
原題は「Letters to Juliet」(邦題とは逆)、「手紙」が最後にちゃんと活きてるのもいい。その場の皆と一緒に拍手したくなる。



イタリア・ヴェローナ、「ロミオとジュリエット」のジュリエットの生家には、世界中の女性から恋の悩みを綴った手紙が集まる。ソフィ(アマンダ・セイフライド)は多忙な婚約者ヴィクター(ガエル・ガルシア・ベルナル)との旅行で一人身になり、その家で見つけた50年前の手紙に返事を書く。すると、差出人のクレア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)が当時の恋人を探すため、孫のチャーリー(クリストファー・イーガン)と共にやってきた。


冒頭は「ニューヨーカー誌の調査員(記者志望)」のソフィが屋台でプレッツェルを買うなど「ザ・ニューヨーク!」的描写。旅に出れば「ザ・イタリア!」、マンマが手料理を食べないソフィに文句をつけるも婚約者と待ち合わせと聞くと態度が一変したり、ヴァネッサに爺さん連中がいちころになったりと「のんきなイタリア」劇が繰り広げられる。田舎の風景も勿論きれい。
始め、アマンダ・セイフライドってやっぱり田舎臭いなあ、この役はうざいなあ、クリストファー・イーガンってヒース・レジャーの魅力をだいぶ薄めたような男だなあ、なんて思ってたのに、二人がなぜか惹かれ合ううち、どちらもチャーミングに見えてくる。「君といるとなぜか最悪な態度を取ってしまうんだ」って何十年前の少女漫画だよって感じだけど、うきうきしちゃう。


ガエルは料理一辺倒で憎めないシェフの役、美味しいケーキの匂いを嗅ぎつけた時の表情が可笑しい。終盤のソフィとのシーンが印象的だ。「みんな仕事はそのままでいいから、ちょっと外してくれ」…なんてことない場面だけど、力強さを感じた。その後のソフィの一連のセリフも真摯でいい。
ヴァネッサ・レッドグレイヴはさすがの安定感、言葉に説得力がある。主に白い服を着こなし、最後にはイタリアの陽光の下でノースリーブに。ソフィをブラッシングしながら「髪を梳かしてもらうのは人生の喜びの一つ」…私も大好き。猫が毛を舐め合うようなものかな?(笑)
結婚式における彼女の格好が、いわゆる「ウェディングドレス」じゃないのもよかった。皆あれが好きなわけじゃないのに、といつも思ってるから。