ファイティング・シェフ


TOHOシネマズシャンテにて観賞。金曜の夜、観客は10人もおらず。



フランス料理の国際大会「ボキューズ・ドール」を舞台に、スペイン代表シェフの奮闘を描いたドキュメンタリー。


ボキューズ・ドールは名称を知っているだけなので、終盤に繰り広げられる大会の様子が面白かった。学園祭の出店のように設営されたキッチンで、体育祭のような声援(日本勢は日の丸ハチ巻きにしゃもじ/「おれはキッチンではラジオも付けないのに…」と言うシェフも)を受けながら料理に臨む出場者たち。結構安っぽい、音楽や火花などの演出。司会者のあおり。勿体つけてポール・ボキューズが現れると、料理中に握手しなきゃなんないのも大変だ(笑)


フランス料理、あるいはこの大会のテーマの一つが、「食べる側が皿を選んでしまうようではだめ」というセリフに表れている。完璧に制御され、均等でなければならない。あるシェフの見方では「スペインは、何をするにも即興で不規則だから入賞できない」。


劇場で観た予告編は「万年冴えないスペイン勢が、今度こそはと頑張る」という内容が、軽快なコメディタッチでまとめられていたけど、実際は淡々とした記録映像で拍子抜けした。とはいえ演出の無さゆえのリアルさも感じた。
主役?のヘスースについても、料理人としての姿しか映されない。本番終了後、白衣にリュックを背負ってたのが可愛かった(笑)
大会を控えての試食会では、居並ぶ先輩シェフたちが、ケータイで写真を撮った後、厳しいコメントを次から次へと口にする。宙を泳ぐヘスースの視線。でもねちねちした雰囲気ではない。たんに「シェフというのは行動的だし、意見を言わずにいられない」らしい。



原題は「El pollo, el pez y el cangrejo real」…鶏肉、魚、そして蟹。作中思い出したように、テーマ食材であるおひょいとタラバガニ、鶏の産地が紹介される。ノルウェーにあるおひょいの養殖場(写真)は、地球の果てって感じで心奪われた。


ラストシーンは、調理場であれこれ指図していたヘスースが、台所に立つ母親に「お水取って〜」と言われ、いそいそと従うというもの。作中、このシーンのパエリヤが一番美味しそうだった(自分の作るのがもっといいとも思ったけど・笑)。コンクールでの「料理」は、普段の食事と違う、芸術的・退廃的なものだから、そう思わせて正解なんだろう。


各国シェフの料理の写真が、映画の公式サイト内のギャラリーで見られる。フランスのコレを目にした時のヘスースの表情、ああいうのを見られるのが、ドキュメンタリーの最もシンプルで強い楽しさだ。