クレイジー・ハート


わるい意味じゃなく、なんだこりゃという気持ちになった。私にとってジェフはいまだに、大好きな「サンダーボルト」のライトフットなので(ちなみに他に好きな出演作は「フィアレス」)、イーストウッドつながりで「センチメンタル・アドベンチャー」を勝手にイメージしてたら、たんなるおっさんの恋物語…しかも幸せな恋の話だった。



「伝説の」カントリー歌手バッド・ブレイク(ジェフ・ブリッジス)は現在57歳、アル中で痔持ちの身体を抱えて一人ドサ回りの毎日。トップスターとなった弟子のトミー(コリン・ファレル)からの作曲依頼も断り酒浸りだったが、巡業先で新聞記者のジーン(マギー・ギレンホール)に出会い、意欲を燃やし始める。


ジーンに惚れたバッドの目には、彼女しか映らない。「君がいると部屋が汚く見える」「こんな部屋で申し訳ない」などとしきりに言う。まぶしく感じられる誰かがいるって幸せなことだ。たとえ、重ねた年のせいか、実際に掃除に取り掛かるまで時間がかかるにしても。また、意を決して疎遠だった息子に連絡も取る。これまで手つかずだったことに対してやる気が出るというのも幸せなことだ。
一方、ジーンの「愛」のセリフはどれも唐突で、冗談かと思ってしまった。私と同世代の役柄だから自分と重ねてしまい、いくらなんでもアレ(役作りでぶくぶくになったジェフ・ブリッジス)はないだろ…という気持ちで観てしまったからかもしれない。恋なんて何でもあり、当人同士の問題なんだけども。


「自堕落」なバッドはしょっちゅうベルトとファスナーをゆるめている。長旅の途中に用を足すためでもあるし、そうでなくても、一人のときはたいていそうしている。そのため途中からそこばかりチェックしてしまった。年寄りに対しては、性的な意味じゃなく、股間が気になるものだ。ゆるめてないけど、インディ4のハリソンしかり。


役作りで相当太ったジェフ・ブリッジスは、まさに「肉とビスケット、酒とタバコ」ばかり摂取してる臭そうなオヤジそのもの。ただしギブスからのぞく足先の、白い指とそろった爪が、素の彼をしのばせた。
マギー・ギレンホールの、垂れた頬と胸(これはいつもだけど)、髪型がとても良かった。登場時、事情もあってドアの外で目を伏せてるんだけど、その後もそういうショットが多く、とても魅力的。またベッドで下を触られて浮かべる笑顔がいい。ああいう顔になってしまうセックスっていいものだ。
スター歌手を演じたコリン・ファレルは、なぜか分からないけど、これまでになくかっこよく感じられた。彼がコンサートを行う会場は、どこも豊かな自然に囲まれた…というか周囲に何もない所で、なかなか気持ちよさそう。ジェフともども、歌も上手かった。