赤ひげ


今月の「映画の日」は、TOHOシネマズシャンテで黒澤明の「赤ひげ」。特別上映のため通常料金だった(どのみち売店でマフィンやらコーヒーやら買うから、割引の意味ない)。


赤ひげ [DVD]

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一挙上映中の黒澤作品のうち、たまたま掛かってたのを観たんだけど、面白かった。劇場だとやっぱり違う。一つ観ると全部観たくなって困る。
全面に押し出される、季節感あふれる色(明暗)や音、あるいは、例えば保本(加山雄三)と女(香川京子)、おとよと長坊のような、画面の中の人間対人間の、それ自体が生き物のような、ドラマチックな動きに心奪われる。たまたま最近目にした文章にあった、志ん朝の「くさくなければ大衆演芸ではない」という言葉を思い出した。勿論、しっかり裏打ちされていればこそ。


年配男性ばかりの客席では、冒頭から、赤ひげ(三船敏郎)と保本のやりとりに笑いが起こる。私には可笑しく感じられず戸惑ってたのが、初手術で気を失った保本が、次のショットで画面の左隅にこちらに背を向けて立ってるのを見たら笑いがこみあげてきて、そこからは、身も心も映画にさらわれた。


舞台は小石川の療養所。始めは保本同様、なんて陰気な所だ!と感じてたのが、最後には、作中の彼と同じように離れがたく、映画が終わるのが惜しくてしょうがなくなる。
(もっとも冒頭に見せられる「寝たきり部屋」がその後あまり映されないことや、冬から春への季節の移り変わりもあるんだろう。それもまたいい)


加山雄三についてどうこう思ったことはなかったけど、大画面で観る美青年ぶりはなかなかだった。おとよの看病による病床で(水をくれと)「あン」とやるシーンの可愛らしさにやられた。


ちなみに赤ひげが「喧嘩が強い」というシーンで、少し前に観た「シャーロック・ホームズ」を思い出した。ダメージの差こそあれ、科学的なアプローチ?で相手をやっつける、という点では似てる(笑)