コズモポリス



同じ「リムジンで移動する一日」もの、「ホーリー・モーターズ」と続けて観たなら、終わった瞬間にストレスで椅子から100メートル吹っ飛んでそう、だけどこっちの方が好きかな。どちらのロマンに心が沿うかってこと。大した感想があるわけじゃないけど、ちょこっと。


オープニング、真っ白なリムジンが隙間無く縦に並んでいる様子が面白く、未見だけど「ムカデ人間」を思い出した。ラスト、ガレージ前に到着したリムジンをぐるりとめぐる映像もぞくぞくするほど美しい。全ての機能を備えた「内側」よりも、こうした「外側」に魅せられた。
主人公エリック(ロバート・パティンソン)が乗るリムジンは、暴徒に揺らされたり落書きされたりしている時には脂汗を流しているように見える。「ホーリー・モーターズ」のリムジンは、誰かが乗り降りする度に(「実際」そうであるように)ピーンピーンと鳴ってたけど、このリムジンは無音。でも最後、ガレージに帰る際のみ、運転手に反応して一度だけ「鳴く」。これが可愛い(笑)


ジュリエット・ビノシュの手がロバート・パティンソンの足首に伸び、そして引っ込む画が魅力的。最近観た映画の中で一番官能的な場面だ。
このビノシュの手を始め、リムジンにやってくる人々はどこかモンスターめいて見える。ドリンクをすする一番目の男、猿のように車内を飛び回る二番目の男(ほとんど松ケンが演じる「L」だよね・笑)、エリックの周りをくねる愛人、汗と体臭を持ち込みボトルをつぶすシングルマザー、微動だにせず頑丈そうな脚を投げ出す女。それは彼らの資質というより、リムジンの内に入ることでモンスターめいて見える、というふうに感じられる。
そこではエリックの内なる「異形」も判明するが、彼はその資質に従わず、均衡を求める。しかしリムジンから外に出る度に崩れてゆき、最後には破滅してしまう。でもやっと、行き着くところに行き着けた、ハッピーエンドというふうに思える。
単純な話、「ビジネスとは突き詰めれば殺人である」から、殺すか殺されるかってんで相手の元に飛び込んでいった、とも考えられる。ともあれ「銃」と、ハワード・ショアの、特にラストシーンの(80年代ぽい)音楽にはわくわくさせられた。


私としてはクローネンバーグの新作というより、全て劇場で観てる「トワイライト」シリーズのメインキャストに愛着があり、出演作はなるべく観るようにしてるから出向いたんだけど、ロバート・パティンソン、はまってた。クローネンバーグの演出ゆえか、私なんて境遇に微塵も共通項が無いのに「共感」させられ、暖かい気持ちで見てた。
豪華な出演者の内、共に(役の上では)「41歳」のビノシュとポール・ジアマッティが、登場時に意図せず「顔を隠し」ているのが面白い。後者とのやりとりはじれったくなるほど長く感じたけど、それも主人公に心が沿ってたってことかな(笑)