それでも、愛してる



ジョディ・フォスター監督作、主役は親友のメル・ギブソン。「ビーバーのぬいぐるみ」を手にはめて話す男を演じる、メルのどーんとやってみよう!というのが、真面目で繊細な作りと相まって観易かった。私としては少々物足りなくもあり。「狂気」とかそういう意味じゃなく、なんというか、きっちりしすぎて、一つ一つの要素が息づいていないように感じられた。


ウツになり眠ってばかりの夫ウォルター(メル)に対し、妻メレディス(ジョディ)は別居を決意。その翌日、自殺を図った彼のもとにビーバーが「出現」する。メルの、始めからパペット使いの上手いこと(笑)
ビーバーのおかげで物事は順調に…「勝ち組」になるが、やがて妻はベッドにまで一緒の人形にうんざり(おまけに「回復するかは分からないけど、こっち(セックス)はもっとすごくなるぞ」なんて軽口叩かれる・笑)。結婚記念日のディナーの席で、家族の「昔」の写真を見せるとウォルターは怒って「俺はウツであって記憶喪失じゃないぞ!」。経験者がよく言う、人は「元に戻る」ことは無い、というテーマがはっきり言葉に出される。しかしメレディスは、寝てれば起きろ、病気になれば元に戻れと言うタイプ。すれ違う二人だけど「家族」ではある。


メルのこと、ずっと苦手だったのが昨年の「復讐捜査線」(何度も書くけど大好き!)で全然大丈夫になった。額のしわと法令線とで、顔に大きなバツが浮かんでるように見える。
二人の長男にアントン・イェルチン、これが「メル・ギブソンの息子」にしか見えないからすごい。「他人の気持ちになって」代筆業をこなす、なんて役柄によく合ってた。その同級生で卒業式の総代を任される優等生にジェニファー・ローレンス、そのぷっくりした指に赤く塗った爪がよかった。加えてジョディの、顔とちぐはぐなぽってりした下半身も。