質屋


ツタヤのシドニー・ルメット追悼コーナーで見つけて、観たことなかったから、借りてきた。
第二次大戦後のニューヨークで質屋を営む男。彼がナチス強制収容所で全てを失ってから、25年が過ぎようとしていた。


質屋【字幕版】 [VHS]

質屋【字幕版】 [VHS]


始めに描かれる主人公サル(ロッド・スタイガー)の一日は、質屋のセットで繰り広げられる舞台劇のような感じ。楽器を鳴らしたりハシゴに乗ったりと店内を飛び回る助手のジーザス、次から次へとやってくる馴染みの(彼が応じないと知っていながら話しかけてくる)客たち、楽器を取り戻しどかちゃかやりながら帰っていくミュージシャン。感傷的な見方だけど、無愛想にも程があるサルを周囲が放っておかないのは、元々備わった何らかの魅力があるからかなと思った。


一日のほとんどを店の檻の中で過ごし、他人を拒否し、「平穏な時間」を望むがうまくいかない。声を掛けられ、会話をしただけで心が乱れる。あの頃の恐怖は、何十年経ってもよみがえってくる。「金だけは信じられる」と自分に言い聞かせてきたが、その金が自分を脅かすものと地続きの「不潔と恐怖」から出来ていることを思い知らされ、更に追いつめられていく。誰かと居たいとも思う。そして最後に、自分以外の人間が「生きている」ことに気付く。ロッド・スタイガーの渾身、すぎるほど渾身の演技。


振り返ってみると、ほとんどの登場人物が犯罪に関与している、犯罪映画でもあるのが面白い。
音楽担当はクインシー・ジョーンズ。主人公の出勤に合わせたオープニングクレジットや「犯罪」めいたシーン、若者たちの様子を躍動感たっぷりに盛り上げている。