悲しみのミルク


ペルー。母の苦しい体験が授乳により子に伝わるという言い伝えがある。ファウスタも自らの恐怖心をそのためと信じ、じゃがいもで自分に「フタ」をしていた。母を亡くした彼女は、遺体を故郷へ運ぶ交通費のため、メイドの仕事を始める。



内容知らずに観たから、最初からほぼ最後まで、腹が痛いような気がしてしょうがなかった(笑)まあ、そういうこともあるかもしれないな、と思う。
映像や音が美しく、真珠を左右から拾っていくシーンやファウスタが花をくわえて扉を開けるシーンなど、きまりすぎなほど「映画的」。私の好みにはちょっときれいすぎるかな。
長い階段やラストに車が抜けるトンネルなど、向こうじゃ普通の風景なのかもしれないけど、ロケ地も素晴らしい。ファウスタのおじが結婚式業を営んでいることもあり、結婚その他様々な風俗が画面を強烈に彩る。色々仕事を手伝うものの、何かというと鼻血を出して倒れてしまうファウスタの姿は、コメディの一幕だ。


ファウスタの雇い主は、西洋人女性のピアニスト。はりめぐらした塀の中に暮らし、花に水をやってストレス解消、現地の職人とはちゃんと渡り合って支払いをする。作曲にゆきづまった彼女はファウスタの歌を耳にして「歌ってもいいのよ」と「寛容」なところを見せ、「歌うたびに真珠を一つずつあげるわ」と物で物を買おうとする。
自分の歌が立派な曲となって演奏されているのを聴いたファウスタが、歩いて舞台の袖まで行く。この時の彼女の表情の妙。本作は音楽映画でもある。映画は彼女の母親が苦痛の体験を語る歌で始まり、娘はそれを癒すかのように歌い返す。母亡き後も、彼女は歌い続ける。それが他人の手によって飾られ、多くの人に届けられる。音楽って何だろうと思う。


庭師の登場シーン、年いってるけどイイ男なので重要人物だと思ったら、やっぱりそうだったので嬉しい(笑)
それから、たまにそういう外国映画に遭遇するけど、ドレスやケーキ、棺桶、指輪の箱など、色んなものがやたら(日本で言う)ファンシー。向こうじゃどういう感覚なんだろう?