小さな命が呼ぶとき



実話を基に、ハリソン・フォードが製作総指揮を務めた作品。
「ポンペ病」に冒された二人の子どもを持つビジネスマン(ブレンダン・フレイザー)が、病気の権威である博士(ハリソン・フォード)と共に製薬会社を設立し、治療薬の開発を目指す。


ここ数年ずっと言い続けてるけど、十数年前には王子様だったブレンダンが、全編どこを取ってもアシカかトドのよう。せっかくエスキモーキス(「ハムナプトラ」でも披露している得意技)や後ろからのハグがあるのに!それでもまあ、彼が眉根を寄せる顔を観ているのは楽しい。一方のハリソンは、得意のはみだし者系「社会性のない科学者」をさらりと演じている。


邦題のイメージとは違い、「家族」に焦点を当てた「感動もの」ではなく、立場も性格も異なる二人が同じ目的のために努力する話。バディ経済ものとでもいえばいいかな。「人命を救う」という、それだけ聞けば誰もが賛同するであろう目的が、ビジネスとしてどうやって結実するか。巨大な製薬会社の壁を飾る、子どもの笑顔のパネルが印象的だ。
「お薬できたの!すごい!」という娘の笑顔のために、パパがどれだけ頑張ったか。家族の描写がほどほどに抑えられているだけにぐっとくる。


研究の資金繰りに困っていたハリソンいわく「病気の子どもの親なら、ベンチャー企業のパートナーにはうってつけ」。ブレンは同僚に「製薬ベンチャーの10に9社はつぶれるぞ」と忠告されても、何もせずにはいられないと、妻と共に決意をする。
「お金」と「時間」に制限される中、二人の努力が続く。プレゼンを控え「科学者同士なんだから分かってもらえるさ」と準備もしないハリソンだが、真面目に用意したブレンの資料が役に立たず、結局は科学者としての熱弁で話がまとまったり、大企業に身売りをしブレンが重役となるが「当事者の家族は上司としては煙たい」と言われ意見が通らなかったり、起業ものとしてのあれこれが面白い。